ランニングパワーを元にしたトレーニング管理サービス・トレーニングピークス(TRAINING PEAKS)によるFTP(Functional Threshold Power=機能的作業閾値パワー)の推定方法について解説します。
- トレーニングピークスでのトレーニング管理に興味がある
- パワーメーターによるランニングパワー計測に興味がある
- ランニングパワーを計測しているもののトレーニングに生かせていない
トレーニングピークスはランニングパワーを元にしたトレーニング管理サービスなのでランニングパワーの基準であるFTPの把握が必要です。
簡単に言えばFTPは1時間維持できる最大出力=1時間の全力走の平均パワー(W)です。
つまり、1時間の全力走をすればFTPを計測することができますが「そんなのできるわけねえだろッ!」という意見が(ハダも含め)大半でしょう。
今回はトレーニングピークスのランニングログからFTPを推定する方法についてまとめました。
- FTPの計測は1時間全力走や20分全力走、3分-9分走法など全力走が必要で辛い
- パワーメーターによるランニングパワー計測+トレーニングピークスでデータからFTPが推定できる
- ビルドアップ走やペース走など追い込んだ練習から定期的にFTPを推定できると成長を実感できる
ランニングパワーによるトレーニング管理に不可欠なFTP
まずはFTPについて整理しましょう。
FTPは1時間の全力走の平均パワー(W)
FTPはFunctional Threshold Powerの略で機能的作業閾値パワーと訳されます。
単位はW(ワット)ですが、自転車のパワートレーニングにもFTPが登場するため、ランニングFTPはrFTPwと表記されることもあります。
簡単に言えばFTPは1時間維持できる最大出力=1時間の全力走の平均パワーです。
ランニングにおけるパワーは以下の数式で示すことができます。
ランニングパワー(W) = 体重 × 加速度 × 速度
つまり、体重が重ければ重いほど、スピードが速ければ速いほどパワーは高くなります。
FTPの計測方法は5つ
FTPの計測方法はいくつかの方法があります。
FTPの計測方法はメチロンさん @methylone のブログが非常に分かりやすいです。
参考 ランニングのFTPを測定する方法・5つを解説メチロンのトレラン日記- 1時間走 1時間の全力走の平均パワーを算出する
- 20分走 20分の全力走の平均パワー×95%を算出
- 3分-9分走 下の記事で実践済みなので詳細お読みください
- 5km走・10km走の流用 パワーメーター・STRYDを利用して推定
- パワー計測ソフトを用いる方法 トレーニングピークス等のデータから推定
(1)の1時間の全力走なんて絶対に無理!
(2)の20分の全力走でも無理!!
(3)の3分-9分走はハダが実践済みなので詳しい内容は下の記事をお読みください。
3分の全力走と9分の全力走の前中後にジョグやウォーキングを挟む方法なのでシンドい時間も少なく(それでもキツいですが…)、ダメージも少ないのでおすすめの方法です。
ちなみにハダ(171cm&66kg)が3分-9分走法で計測したFTP値は351Wでした。
【Garmin ランニングダイナミクスポッド】ランニングパワーやFTPを計測するパワーメーター(3分-9分走法を実施)【ガーミン ランニングダイナミクスポッド】ランニングパワー・FTPやフォームを計測するツール
(4)の5km走・10km走の併用はパワーメーター・STRYDが必要なので今回の記事では割愛します。
今回は(5)のパワー計測ソフトを用いる方法として、トレーニングピークスのランニングデータからのFTPを推定する方法について説明します。
ハダ
ランニングパワーによるトレーニング管理ではFTPを定期的に計測し推移を測る必要がありますが、FTPの計測は非常にキツい…!今回はFTPをトレーニングピークスのデータから推定するので全力走は必要ありません
トレーニングピークスの過去ランニングログによるFTP推定
トレーニングピークスによるFTP推定について説明します。
トレーニングピークスはランニングパワーを元にしたトレーニング管理
トレーニングピークスはランニングパワーを元にしたトレーニング強度や疲労を算出するトレーニング管理サービスです。
月間走行距離をトレーニング量の目安にする考え方もありますが、一定の走行ペースではなく獲得標高や路面状況で負荷も異なるトレイルランニングにおいてはランニングパワーでトレーニングを数値化する考え方が有効です。
独自の指標・TSS(Training Stress Score)を元にトレーニングの強度や効果、疲労を数値化することができます。
年額12,540円・英語のみ・理系的な管理画面・よく分からない単語の羅列…ととっつきにくさはありますが、慣れれば非常に面白いサービスですよ。
詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
【ストラバ】STRAVAとTRAINING PEAKSの価格や使い方、管理のコツ【トレーニングピークス】【ストラバ】STRAVAとTRAINING PEAKSの価格や使い方、管理のコツ【トレーニングピークス】
ランニングログアプリとして利用しているストラバとトレーニングピークスについてまとめました👆
【注意!】前提としてFTPの計測は必要
今回のトレーニングピークスを使ったFTP推定には前提としてFTPの実測値が事前に必要です。
なぜならばトレーニングピークス内でトレーニング強度を示す値TSS(Training Stress Score)の算出にはFTPを用いるためです(上の計算式を参照)。
つまり、パワーメーターを着用して(2)20分全力走や(3)3分-9分走法に取り組む必要があります。
今回のトレーニングピークスの過去のランニングログからのFTP推定は1度測ったFTPの実測値に対しどのくらい変化があるのかの指標として生かす方法です。
トレーニングピークス内のTSSには複数の測定方法があり、hrTSS(heart rate 心拍数)を元にしたものもありますが、心拍数ではなくランニングパワーによるFTPを計測するならばパワーメーターの着用がおすすめです。
ハダがGPSウォッチはGarminのForeAthlete945、パワーメーターは同じくGarminのランニングダイナミクスポッドを着用しています。
過去のトレーニングログからFTPを推定する
今回のFTP推定ではトレーニングピークスの過去のランニングログを利用します。
例えば、上図はハダがビルドアップ走15kmに取り組んだ際のトレーニングピークスのランニングログです。
キロ4分15秒から始め、ラストはキロ3分50秒くらいまで上げ、平均ペースはキロ4分00秒なのでシンドいビルドアップ走でした。…ゼエゼエ……。
FTPは1時間の全力走の平均ランニングパワーで算出することができますが、このビルドアップ走15kmは走行時間がジャスト1時間だったので比較しやすいデータを得ることができました。
- 距離15km、時間60分、平均ペース 4分00秒/km
- TSS 107、FITNESS 77、FATIGUE 74、FORM 12
1時間の全力疾走をした場合のトレーニング強度が111TSSなので、ビルドアップ走15km(=107TSS)はそれと同等強度のトレーニングだと言えます。
上の画面ではTSSの単位変更もできます。
107TSSを心拍数ベースのhrTSS(heart rate)に変換すると70hrTSSと大幅減少、rTSS(running)に変換すると109rTSSと微増しました。
ランニングの計測データなのでTSS=rTSSだと思うのですが、なぜ数値がズレるのかは謎です(分かる方ぜひ教えて下さい〜)。
パワーメーターが無くても心拍数ベースのhrTSSを計測し、TSSに変換すればおおよそのランニングパワーは管理できそうです。
各トレーニングログの詳細ページを見ると、心拍数や走行ペースに加え、ランニングパワーの推移を知ることができます。
上図の左の棒グラフ・Power By Zonesを見るとビルドアップ走は以下の内容でした。
- Zone1 0〜196W 比率:1% %FTP:0〜56%
- Zone2 197〜266W 比率:1% %FTP:56〜76%
- Zone3 267〜317W 比率:3% %FTP:76〜91%
- Zone4 319〜371W 比率:58% %FTP:91〜106%
- Zone5 372〜424W 比率:36% %FTP:106〜121%
- Zone6 425W〜 タイム:1% %FTP:121%〜
トレーニングピークスではFTP値に基づいてランニングパワーの比率が計算されていますが、Zone4とZone5の比率が58+36=94%と大部分を占めています。
つまりビルドアップ走15kmのほとんどが319〜424WとFTP値351Wに近いランニングパワーで走ったことがよく分かります。
次はいよいよFTPの推定です。
上図の右側の右肩下がりの折れ線グラフ・Peak Powerを見ましょう。
Peak Powerでは、ランニングログを元にし「◯分だったら平均ランニングパワー△Wで走れた」とデータ化してくれます。
FTPは1時間の全力走の平均ランニングパワーで算出することができるので、Peak PowerのPeak 60 minの項から今回のランニングにおけるFTP推定することができます。
今回のビルドアップ走15kmのPeak 60 min(=推定FTP)は361Wでした。
以前3分-9分走法でFTPを計測した時は351Wだったので、+10の結果が出ました。
ちなみにGarmin Connectの計測データによると今回のビルドアップ走15kmの平均ランニングパワーは361Wと推定FTPと等しい結果が出ています。
1時間以内の計測データでもFTP推定は可能
1時間以上のランニングをしないとPeak 60 minが表示されませんが、1時間以内のペース走やビルドアップ走で追い込んで(2)20分走を参考に、Peak 20 minからFTPを推定することも可能です。
Peak 20 minの平均ランニングパワー(W)の95%(×0.95)でFTPを推定できますよ。
今回のビルドアップ走15kmでは、Peak 20 minの平均ランニングパワーは381Wなので、381W×0.95=361.95W、と近い数字が算出できます。
日々のトレーニングの中で「あのペース走はしっかり追い込めたな」と思えるようなランニングログを見直してFTPを推定するのが良いですね。
ランニングFTPに基づくパワーゾーン
心拍数で運動強度を評価する場合、心拍ゾーンという考え方が使われますが、パワーにもパワーゾーンが存在します。
Jim Vance氏が定義しているパワーゾーンはゾーン1〜7まで組まれています。
そのパワーゾーンにハダのFTP=351を当てはめて各ゾーンのパワー値を計算してみたのが上図です。
心拍ゾーンによる運動強度では、心拍数が上昇するまでにどうしてもタイムラグが発生してしまいますが、ランニングパワーでは瞬間的な数字が把握できるのでズレがありません。
心拍ゾーンと合わせてパワーゾーンを考慮しながら鍛えたいゾーンをトレーニングしてみたいと思います。
Jim Vance氏のパワーゾーンとトレーニングピークスのPower By Zoneもおおよそ一致していますね。
ハダ
個人的には10〜20kmのランニングが多いので(3)テンポ走(4)閾値走になってしまいがちで(5)高強度(6)VO2MAX等のスピード練習が足りないのが課題です。インターバル走を重ねて追い込まねば。
まとめ
FTPを計測するために1時間の全力走や20分の全力走を定期的に実行するのは精神的にキツいですが、ビルドアップ走やペース走を制限時間1時間で設定し、計測された平均ランニングパワーからFTPを推定する方法も良いと思います。
普段の練習であるビルドアップ走やペース走からFTPを推定できると日々のトレーニングの効果を実感できて嬉しくなります。
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