「アンタ、フキは要らんか?」
「いやぁ、フキならすぐそこにも生えとるんで要らんですね」
「や、フキの炊いたのじゃで」
「あ、炊いたやつなら欲しい」
「そ、ほいじゃ持ってくるから待ってな」
「いっぱいはよぉ食べんので、ちょっとで大丈夫ですよ」
「はいはい〜」
と向かいのおばちゃんが持ってきてくれたフキタイタノ。ゼリーの空き容器に詰めてお一人さま分、かわいい。「アンタ来週から東京に出張に行くって言うとったな、余ったら捨ててくれてええでな」なんておばちゃんは言ったのだけれど、あっという間になくなったのでした。一日半、白飯四杯分。
そして、デイ・アフター・フキノタイタノ。
前から気になっとったんじゃけどな、と(おばちゃんとは別の家の)おっちゃんが我が家の庭を見て一言。
「アンタんところ、わざとフキだけ残しとるんか?」
「あ、先月に父が村に来た時、草むしりしたんですけどフキだけ残していったんですよ」
「そりゃ、たいがいじゃ」
アンタのお家は育ちがええんじゃな、とおっちゃんは付け加えた。
庭を見て「育ちがええ」と言ってもらえるなんてとても驚いたのだけれど、父がすこし誇らしいなと思ったりしたわけで。きっと父の両親もまた、当たり前のようにやってきたことなのかもしれない。
「フキだけ残しといたで、食べるもんなかったら食べろよ」と父の伝言なんてすっかり忘れていたのだけれど、おかあちゃんのレシピを尋ねてみようと思ったのでした。材料は庭にあるんだし。