木造住宅1棟あたりの木材使用量が最も多い部材は横架材。特に梁・桁です。
住宅全体材積の70%を構造材が占め、中でも横架材は40%の割合。そして、梁・桁は30%にも及びます。
梁・桁において国産材の利用拡大が進むと、住宅市場における国産材比率が増加するのでは?
しかし、実情はそうではありません。梁に利用される部材はアカマツが非常に多い。
杉も使われることがありますが集成材の利用が多く、KD(乾燥材)平角が使われることは非常に稀です。
梁・桁に杉のKD平角が使われない原因はどこにあるのでしょう。
日刊木材新聞に「杉KD平角の挑戦」というタイトルで示唆に富む時評が掲載されていました(2014年6月11日)。
記事によると、
一部の国産材製材大手を除き、積極的に杉梁・桁の量産を目指す動きはこれまでほとんど見られなかった。その原因は以下にある。
[1]平角サイズの煩雑さ
[2]杉平角の人工乾燥の問題
[3]適材丸太の安定供給体制が未整備
杉KD平角に取り組む以上、機械等級区分構造用製材のJAS認定工場との連携が重要になってくる。無等級の場合、杉の樹種強度はかなり低く、使える部位が限定されてしまう。
杉KD平角は製材工場の負担が大きいことに加え、大都市市場ではベイマツKD平角、欧州産針葉樹原材料由来の内外産集成平角が市場を席巻しており、価格、品質、供給安定性で杉KD平角がこれに対抗していくのは至難の技である。
と書かれていました。
実際に国産材を主に挽く製材工場でお話を伺っていると「梁・桁はやりたくない」という意見がちらほらと聞こえてきます。
特に、日刊木材新聞の記事にもあがっていた[1]平角サイズの煩雑さ、[2]杉平角の人工乾燥の問題、に対する意見が多いです。
70種類以上にも及ぶサイズの煩雑さから効率的に製材できなくなってしまうこと。
乾燥に時間がかかること(大寸面構造材を内部割れしないように乾燥させるには設備と時間が必要)。
これらの原因に対応するくらいならば、そもそも梁・桁は挽かない方が良いと考えるのが当然なのかもしれません。
実際にある製材工場でお話を伺った際も「中目材はブロックで挽いて芯込間柱をつくった方が工場全体で効率がいい」とおっしゃっていました。
材積/単価が高い梁・桁ですが、サイズが多いために受注生産になりがち。受注生産になれば効率が悪く、乾燥にも時間がかかるため、他の製材アイテムの生産量を妨げかねない…という流れになってしまうのでしょう。
課題ばかりを取り上げてしまいましたが、多くの製材工場がやりたがらないということは勝機があることもまた事実。
住宅市場において梁・桁が国産材使用量の利用拡大を握っているのは確かです。すでに九州市場では杉KD平角が一定のシェアを獲得しつつある動きもみられますし、今後、梁・桁において国産材がどう活用されていくのかが気になるところです。