JALが車いすを木製にした理由に国産材活用のヒントが詰まっていた

「日本の木でギターつくりました」「国産材iPhoneケースを開発しました」

森林資源の有効活用を目的として、間伐材や国産材を利用した商品開発事例は巷にありふれています。

 

ただ「誰が欲しい商品なの?」「どれくらい売れるの?」と考えてみると、確かな市場や需要がある商品はなかなか少ないもの。

日本の木を使って新たなマーケットを切り開こうとすること自体はチャレンジングで素晴らしいと思います。ぼくら材木屋もそんな会社でありたい。

一方で、はじめることよりも続けることの方が難しい。利益が出ないとモノづくりは続けられない。利益を出しながら続けるってことが大切なのは言わずもがなだけど、それが難しい。

 

国産材ギターって音の鳴りは他ギターと比べて良いのですか?

国産材iPhoneケースはどんな人に、どれくらい売れる見込みなんですか?

 

その問いに対して、

「スギなので材質は柔らかく耐久性は低いです。大量生産しておらず手加工なので人件費がかかります。相場と比べると価格は上がります」

でも!!でもッ!!!!

「日本の森を守るために国産材を使ってるので買ってください!!」

と提案するのは流石に厳しいものがある。そりゃぁ無理だ。

 

「なんで日本の木を使うの?」と問いかけられた時に「わざわざ国産材を使う理由」がある製品って以外に少ないのかもしれません。

 

前置きが長くなりましたが、以下の記事で見つけたJALが木製車いすを導入する過程で「木を使う理由」が非常に面白かったのでこんな記事を書いているのでした。

 

JALはなぜ車いすを木製にしたのか[毎日新聞]

 

記事の内容としては、JALが全国の空港に合計80台の木製車いすを導入したというニュースでしかありません。しかし、記事を読み進めてみると、木を使った理由が面白いのです。

 

ぜひ30秒だけ考えてみてください。

 

JALはなぜ車いすを木製にしたのか?

今回の場合、2つの理由があります。

 

記事を抜粋してみると、

これまでJALが用意していた車いすはほとんどが金属製だ。そのため、保安検査で金属探知機をそのまま通過できず、乗客はボディーチェックを受ける必要があり、車いすの乗客からは負担になるという声が寄せられていた。木製にすれば、金属探知機をそのまま通ることができ、乗客の負担を減らすことができる

今回、竹でも樹脂でもなく木製にした理由について、開発を担当したキョウワコーポレーション(広島市)は、特注品で限られた数しか導入できなかった竹製はもちろん、金型が必要な樹脂製よりも初期投資が少ないうえ、木製であれば合板を整形してから削るため、顧客の細かなニーズにも柔軟に対応できるからだという。

いかがでしたか?

 

答えは、

① 金属探知機が反応しない材料としての木材

② 初期投資を少なくしつつ細かなニーズに柔軟に対応するため

というものでした。

 

①の理由がクイズのようで、おおおナルホド!と独り唸ったのでした。

②の理由も面白いですね。そもそも何千台・何万台と大量生産するわけではない背景で、かつ初期費用を抑えながら仕様変更にも対応できるために金型を使わずに加工可能な木を使うというもの。

 

残念ながら?JALが採用した木製車いすはフィンランド産シラカバとのことで国産材ではないですし合板成型なのですが、「木が使われていない既存製品をわざわざ木で作り替える理由」が詰まった、材木屋としては目からウロコの良記事でした。

 

スギやヒノキなどの国産材は踏み心地がやわらかくて気持ちいですよ、良い香りがしますよ、調湿効果がありますよ、と材木屋として木材を製造販売する上での「無垢が良い理由」は毎日のように提案し続けているのですが、今回はまったく別の市場&製品での「木を使う理由」を知ることができて良い頭の体操になったのでした。