火事、牛丼、材木屋の共通点。ボトルネックは何処にあるのか?

gyudon

今日は西粟倉村で火事がありました。平日の真っ昼間、村北部のスキー場内で発生した山林火災でした。

火災の発生から一時間半程度で鎮火、迅速な対応によって被害は抑えられ、怪我人もなかったとのこと。大事に至らず、まずは一安心でした。

 

はじめての火事現場。全体が見えていない中で、ひとり焦ってもまったく意味がない

今春から地区の消防に加入したばかりのド新人・羽田も微力ながら消化活動に初参戦。あわただしく会社を飛び出して、消防服とヘルメットを抱え、消防車に乗り込み、いざ現場へと向かったのでした。

 

ド新人クン、いざ現場に足を踏み入れたはいいものの、消化活動の過程や段取りなんてまったくと言っていいほど分かりません。ただの役立たずです。

やさしい先輩隊員の指示を仰ぎながら、末端の末端のお手伝い。消防車から機材を降ろし準備をしたり、ホースを担いで山を登ったり降りたり、の繰り返し。

何をやっていいのかよく分からず、兎にも角にも仕事を探して足を動かしているうちに、アレヨアレヨと火事は鎮火され、消火活動は無事に終わったのでした。

 

目の前で急速に燃え広がっていく様子を目の当たりにすると、気持ちばかりが焦ってしまうものの、一人ひとりができることは非常に限られています。

けれど、その一つひとつの作業や一人ひとりの行動が積み重ならないと消火活動は行うことができません。至極当然な感想だけれど、まさにチームプレイあっての消火活動なのだなと思ったのでした。

 

そして、ホースを担いで大急ぎで山を登ったり降りたりしながら、「あ、これって製材工場と一緒だわ」と気づいたのでした。

 

工場のボトルネックは何処か?「うまい・やすい・はやい」モノづくりをするための課題

ぼくたち材木屋は、モノづくりをするメーカー。

木製品の原料となる丸太を仕入れることから商売がはじまり、丸太の製材、乾燥、モルダー加工、節埋め等の仕上げ処理、梱包など、さまざまな工程を経て製品を製造しています。

 

大手牛丼チェーン・吉野家のコンセプト「うまい・やすい・はやい」ではないけれど、お客さんにとっての「うまい(質が良い)・(値段が)やすい・(納期が)はやい」を満たすために、メーカーとして改善を繰り返す毎日です。牛丼屋だって材木屋だって目指すところは同じだ!

 

特に、生産能力の向上に直結するボトルネック(最も生産性が低い生産工程)の課題解決は、すべての工場が望むものなのかもしれません。

誰だって要領良く効率的に仕事したいもの。とは言うものの、なかなかうまくはいかないのが仕事の常。その原因は分かっているようで、実は分かっていないわけで。

 

エリヤフ・ゴールドラットの著書「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」では、ボトルネックと生産能力の関係性について、以下のように述べています。

工場全体の生産能力は、ボトルネックの生産能力によって決まる。 それ故に、非ボトルネックを改善して効率が上がったとしても、工場全体の効率には全く影響を与えない。

つまり、ボトルネックの生産能力=工場全体の生産能力、ということらしいのです。

 

ボトルネックではない工程に、過剰に設備投資をしたり人員を増加しても、全体の生産能力は向上しないんですね。

だからこそ、ボトルネックが何なのかを見定める必要があるし、改善する必要がある。そうでないと、努力は一向に実らず生産能力は伸びないという結果になってしまう。それじゃ困る。

 

全体最適と部分最適。効果のない努力に時間を費やしてしまう、なんてことにならぬように

火事の消防活動も、牛丼屋の運営も、材木屋の仕事も、同じです。ボトルネックを明確にしていないと、実るアテのない努力に汗をかくなんてことになりかねません。

 

はやく火事を消したいと焦るものの、火元に水を供給するための導線と設備が整わないと消火活動は行えません。

熟練厨房スタッフが牛丼をとんでもないスピードでつくれたとしても、ホールスタッフの手が空いていなければ、ほかほかの牛丼は冷めてしまいます。

いくら高性能な機械を導入して効率的に木材を加工できたとしても、手作業で選別する工程に人手が足りなかったら、いつまで経っても製品は完成しません。

 

冒頭のド新人消防隊員・羽田が消火活動の全体を把握していないのにもかかわらず、目の前の火を見てただただ焦るなんてことはまさに意味がないのですね。

お前はボトルネックじゃない!羽田が全力で山を駆け上ってホースを運んだとしても、走って縮めた時間の分だけ消火活動がはやく開始できるわけではないのです。

 

全体最適の絵をイメージできていないと、部分最適に走ってしまいます。結果、効果のない努力に時間を費やしてしまうことになる。

でも、なんだか不思議な達成感はあって、それがまた(非常に)厄介だったりする。そんな時は決まって、結果や効率ではなく、費やした気持ちや時間を勝手に評価してしまいがちです。

 

はじめての消防参戦。あわあわと焦るだけで大してなにも出来ずに終わってしまいました。残念無念、今回後悔。

次の現場こそはッ!と鼻息荒くしていると「次の現場に出動しなくていいことが平和だね」と先輩隊員。なるほど…!

 

そして、消化活動終わりに差し入れとしていただいたのはオニギリと唐揚げ。消火活動の最中に(何十人分も!)準備して届けないと間に合わないもの。消火活動の裏で、消防隊員のためを思い準備してくださったひとがいるということなんですね。まさに全体最適!言わずもがな、出来立てのオニギリと唐揚げはとんでもなく美味しかったのでした。