蔵人がお椀に付いたお米をお茶とたくあんでキレイに拭き取って食べる話

gohan

今回は日本酒を醸す蔵人の生活とお米の話から食べ物について考えてみました。

ご縁があって日本酒の酒蔵で働いていた時に蔵人さんと同じように生活をしていました。僕は実家から5分で蔵まで通うことができたので住み込みはしていませんでしたが、朝5時から蔵を訪れ準備を開始する、といった生活でした。

窯の準備をして、米を蒸して、朝食。米を運んで、麹をまいて、掃除をして、ちょっと休憩してお茶を飲む。また仕事に戻ってひと段落ついたら昼食。ちょっと昼寝をして、再び仕事。午後も2時間くらい仕事をしたら少し休憩をして、また仕事に戻って…そして、5時過ぎくらいに終わり。そんな蔵人的生活を一時期していました。

 

米粒ひとつも残さない

きっかけは朝食の時でした。朝はたいてい、ご飯に味噌汁、漬物とシンプルなもの。各々ささっと食べてすぐ仕事に戻るのですが、ある蔵人さんの食べ方が目に留まりました。

彼はご飯がよそっていたお椀にお茶を注ぎ、たくあんを箸で器用に扱って、お椀にこべりついたお米の一粒一粒をきれいに取っていたのです。食べ終わった後のお椀はとてもとてもきれいなものでした。

その蔵人さんは1年の半分を実家のある新潟で農家として働き、残りの半分は蔵人として過ごしています。新潟ではお米をはじめ、大根などの野菜もつくっているそう。その一風変わったご飯の食べ方について伺うと、

「自分でお米をつくっているから、お米一粒をつくるまでの大変さを知っているし、毎日お米を食べられることに感謝しないとね」

と当たり前のように答えていました。

 

その方だけではなく、他の蔵人さんも決して食べ物を残したりしません。酒造りについても同じです。和釜や機械にこべりついたお米も一粒一粒、大切に扱うのです。作業効率から考えたらとても非効率かもしれません。ですが、お米にかかわる仕事だからこそ、お米を大切に扱う、感謝する姿勢にとても感銘を受けました。

 

その背景を想像できるか

蔵人さんの行動や言葉を振り返ると、口にするものの背景を想像できるかどうか、がとても大切なように感じます。

やっぱりコンビニのお弁当よりも母が作ってくれたお弁当は美味しいですし、美味しく食べたいという気持ちも食べ残しはやめようという気持ちも一層大きいです。なにより、お弁当を作ってくれた母の顔と苦労が想像できる。毎朝早く起きて、お弁当のおかずを考えて、合わせて朝食も作って、と本当に大変ですし、感謝もしています。

 

農家さんのお米づくりや蔵人さんの酒づくりの苦労は僕には図り知れません。

ですが、それを多少なりとも知って口にすることはできるし、大切に味わうことはできるはずです。毎日当たり前にする食事だからこそ、その食事に材料にどんな背景があるのか、思い描きながら食事ができたら素晴らしいことだと思うのです。蔵人さんの姿勢をこれからも忘れずにしていきたいです。