トレイルランニングシューズをわざわざランニングショップで買う理由。試し履きが必要なランニングシューズには店頭コミュニケーションこそが付加価値になる

東京出張の帰りに都内のアウトドアショップに足を運びました。お目当てはトレイルランニングの装備調達。シューズやらウェアやらギアやらいろいろと物色しようと楽しみにしていました。

ランニングシューズは絶対に試し履き主義

ぼくが暮らす西粟倉村の近くにはトレイルランニングのシューズを売っている場所なんてどこにもないし、岡山市内にもお店はありません。神戸や大阪まで行かないと満足に選ぶことができないんです。さすがにトレラングッズを買うために片道二時間は心理的にも物理的にもシンドイ。

 

特にシューズは履いてみないと分からないので、必ず試し履きをするようにしています。メーカーによってサイズも足幅や甲の高さも違うし、機能も大きく異なります。

小学校から高校まで、ずっとサッカーをやっていたこともあって、シューズ選びはもっとも慎重になるところ。機能やデザイン、値段を画像とテキストだけ確認して、ネットでポチるのにはかなりの勇気が要ります。

教えて!バイトくん

アウトドアショップでシューズを眺めていると、(おそらく)バイトのお兄ちゃんが声を掛けてくれました。どこぞやの大学の陸上部風の青年(完全にイメージです)。

「気になるものがあれば、サイズをお出しますよ」と、よくある接客。

事前に調べていたものを一足二足三足と出してもらい、試し履きをしながら足に合っているかを確認。バイトくんにも何度か質問をします。

「このシリーズのクッション性ってどうですか?」

「今は◎◎◎◎を履いてるんですけど、近い性能のものってありますか?」

とか、こんな感じ。

それに対し、バイトくんの対応はあんまり良くなくて、

「そっすねー、この辺どっすか?」

「これ、けっこう人気ですよ」

といった対応で、自分の知りたいこととは違う回答が返ってきてしまう。

 

(おそらく)バイトくんだし、トレイルランニングもやっていない感じだし、求めている回答がなくても仕方ないよなーとがっかりしつつ、お目当てのシューズのサイズを数点確認してお店を出たのでした。

きっと家に帰って楽天でも見ながら最安値のお店で買うことになるのでしょう。楽天ポイントもけっこう溜まってるし。

◎もはやリアルで買う理由がないのだけれど

リアルな店舗でモノを買うことが本当に少なくなってきたなーと思うのです。わざわざ交通費をかけて、時間をかけて、実店舗でモノを買う必要性がほとんど無くなってしまいました。

電化製品だって、家電量販店で実物を確認し、カカクコムで最安値で買うひとは多いはずです。ネットで買えば、すぐに配送してくれるし、わざわざ重い物を運ぶ必要もありません。

 

ですが、トレイルランニングのようなある程度ニッチな市場の商品ならば、実店舗でのコンシェルジュ的な提案が価値を生むことは大いにあります。だけど、商品のことをよく分かっていないバイトくんではなかなかその価値が出ません。

 

「このシューズにするなら、あのインソールも合わせて買うともっとクッション性が上がりますよ」

「あのシューズなら、いま履いている◎◎◎◎と感覚が近い走りができますよ」

といったような、リアルなコミュニケーションの場でしかできない、お客さんに適した提案が必要なのだと感じたのでした。

 

以前、都内のスポーツショップでマラソン用シューズを買った時は、店員さんがぼくの足のサイズを測ってくれて、一緒に小一時間、あーでもないこーでもないとどんなシューズが合うかを考えてくれたことがありました。

それがとても親身で適切なアドバイスで、ぼくはネットで買うのをやめて、その場で購入することにしたのです。気づけば、予定になかった靴下やインソールまでも買ってしまった。完全な出費オーバー。でも、気持ちのいい買い物でした。

叩き台がないと叩けない

先日、こんなこともありました。お客さんの新店舗の開店祝いに御花を買おうと、出張の合間に商店街の花屋さんを訪れました。

 

ぼく「店舗の開店祝いに御花を渡したいんです」

店主「どんなものがいいですか?」

ぼく「え、どんなものがあるんですか?」

店主「えーっと…いろいろありますけど…」

ぼく「いや、価格帯とかパッケージの種類とか見た目の雰囲気とか…」

店主「え、どんなものが欲しいか具体的に言ってもらえないとナントモ言えません…」

 

そもそも花屋でお祝い用の御花なんて買ったことがほとんどないし、どんな花が良いのか、いくら位が妥当なのか、まるで検討がつきません。開店祝いといえばコチョウラン?程度の知識しかないのです。

「値段はこれくらいで、花の種類はコレとアレで、包装はこんな感じに…」だなんて具体的なイメージを持っていないのです。だから、花屋さんに来た。だから、提案をして欲しかった。

 

決めるパターンは価格帯・花の種類(色)・包装…とある程度決まっているのだからそれを組み合わせるだけでも一つの提案になるはずです。叩き台がないのでは、叩きようがありません。

ちなみに、別日にネット経由でお花を買ったときは数あるパッケージの中からワンクリックで選んだだけでした。リアルよりネットの方がずいぶんと分かりやすかったのです。実物写真は写真で送付されるので、不安もほとんどありませんでした。

 

結局、お花屋さんでは「◎◎◎◎円の予算で、色がいっぱいで賑やかな感じ」というなんともイマイチな要望を伝えて御花をつくってもらったのでした。

お客さんに開店祝いを渡す時に、「これは◎◎の花で…」なんて一言を添えたいのにそんな知識も手に入らず終い。なんともモヤモヤの残る買い物でした。

もはやコミュニケーションにしか価値がない

どこで買っても同じ製品なら、安い方がいいに決まってる。ネットで買えば、手間も省ける。自分で選んで決めることができるのならば、ワンクリックで買ってしまえばいい。

 

ですが、その一方で、リアルな場でないとできないコミュニケーションが存在するのも確かです。みんな、自分で決められないから悩むのだし、よく分からないから尋ねるのだ。

頼まれゴトは試されゴト。

それを解決する過程にこそ、リアルな場でのコミュニケーションの価値があるんだと思ったのでした。