これからのモノづくりに必要なのはファブレスメーカーの伴走者。開発→量産→発送まで出来る「オーダーメイド型の中量生産」に需要あり

製材工場は急激に減少しつつも生き残りを賭け大型化&量産化しています。

西粟倉・森の学校のような小さな製材工場がこれからも生き残っていくための手段を考える上で「オーダーメイド型の中量生産」が大きな武器になると考えています。

全国の製材工場は急激に減少しつつ大型化&量産化している

丸太を仕入れて木材を加工する、いわゆる製材工場が全国にどれくらいあるかご存知ですか?

 

11,692工場(’00) → 6,242工場(’11年) → 4,933工場(’16年)

 

農林水産省や林野庁の統計をまとめると、2000年から2016年までの16年で60%が減少していることが分かりました。

 

その一方で、大型製材工場はさらなる大型化&量産化を進めています。

日刊木材新聞の2018年の記事によると、年間原木消費量が10万立方メートルを越える会社が20社を越えたとのこと。中には、50万立方メートルを越えるモンスター工場もあります(丸太換算で数百万本/年を加工する)。

2011年には年間原木消費量が10万立方メートルを越える会社は8社だったので、7年で倍以上の数に増えています

 

ぼくたち西粟倉・森の学校は30名弱のスタッフで構成される製材工場ですが、年間原木消費量は3,000立方メートル程度。

年間原木消費量10万立方メートルを越える国内トップクラス製材工場20社は、ぼくたちの30倍以上の規模でモノづくりをしています。

 

残念ながら、いわゆる父ちゃん・母ちゃん・兄ちゃんでの家族経営的「サンチャン製材」工場の数も少なくなっています。製材業に新規参入するなんて話は全くと言っていいほど聞きません。

製材工場は急激に減少しつつ大型化&量産化する流れが進んでいます。

大型量産工場が手を出せないオーダーメイドの領域

大型量産工場が製造する製品ってビックリするほど安いことがあるんですよ。ぼくたち小規模工場がつくる製品の製造原価を平気で下回るような価格で流通していることもあるんだから驚きです。

特に柱など住宅用構造材や羽目板など住宅用内装材は差別化が効きにくい製品です。ましてや全国で生えている杉や桧などの針葉樹ならなおさら。

 

西粟倉・森の学校は、縮小する木材業界&住宅業界のラットレースに巻き込まれないよう七転八倒・五里霧中の日々の中で試行錯誤を繰り返してきました。

賃貸住宅向けDIY無垢床パネル「ユカハリ・タイル」を開発したり、既存の木材流通をすっ飛ばしてエンドユーザーに直接訴求したり、ワリバシから公共建築物の木材供給まで幅広くモノづくりに取り組んでいます。

狙うは新たな木材需要、そして、既存の木材流通の抜け穴です。

 

特に最近、大きな需要を感じているのが冒頭の「オーダーメイド型の中量生産」です。

 

ファブレス(独自に企画・開発した商品の製造を外部企業に委託)の雑貨メーカーから依頼を受けて木製什器をOEM製造したり、設計事務所さんから依頼を受けて特殊な仕様やサイズの内装材を製造することが増えています。

家具メーカーの家具部材のプレカット加工に取り組んだり、木材の産地指定を受けて県外から原木を仕入れてモノづくりに取り組むこともあります。

 

つまり、オーダー対応型・中量生産のスポット案件

数十〜数百単位の製品の開発→量産→発送プロセスの伴走や、物件ごとのオーダー対応は、量産化された大型工場が非常に拾いにくい領域です。

職人型木工房が得意とするオーダーメイドの一点モノ製造規格化された大量生産品の間には一定の市場があると感じています。

 

「こんな商品をファブレスで企画して販売してみたいけど、正直どれくらい売れるかはまだ分からない。まずは試作開発をしながら量産に向けてコストダウンも含めた提案が欲しい」といった相談をよくいただくようになってきました。

開発→量産→発送まで出来るファブレスメーカーの伴走者が必要

最近のアパレルの動きを見ていると、クラウドファンディングなどを活用しながらファブレスメーカーが「100人のうち1人が熱狂する服」を企画し届けている印象を受けます。ALL YOURSEVERY DENIMあたりが咄嗟に名前の上がるブランドでしょうか。

 

また、個人的には、パンと日用品の店わざわざの靴下「残糸ソックス」が履き心地最高でお気に入り。

こちらは長野のタイコーというニット製品の製造販売会社が製造しています。製造会社名を隠さず、共同開発の様子もストーリーとして販売しているのもポイントですね。

 

ファブレスの特徴は、資金や人手を抑えつつ最小限の資本での商品開発が可能であること企画した製品に合った委託先を探せることなどがありますが、例に挙げたブランド勢は企画、対面販売、コミュニティづくりに注力している印象を受けます。

なぜこの商品をつくるのか、誰に届けるのか、次の企画にどう生かすかを考え抜き、ファブレスでモノづくりに取り組んでいますね。

 

例に出したのはアパレルですが、こういったファブレスメーカーの伴走者になれるのがぼくたちのようなオーダー対応型・中量生産のスポット案件が得意な製材業者(材木屋)だと感じています。

 

製品開発→量産→発送プロセスを自社一貫体制で対応できるのがポイント。

  • スピード感のある試作開発ができること
  • 品質を維持しながら量産してコストダウンを図れること
  • 人員の少ない会社が避けたい個梱包→発送作業までできること

これらの特徴からファブレスメーカーと良いパートナーシップを結べると信じています。

 

「実現したいアイデアはあるけど、工場を建ててヒトを雇って始めていたら何年先になるか分からない!どれくらい売れるかもまだ分からない。まずはファブレスでこのアイデアを実現したい!」そんな事業者さんとスクラムを組んでモノづくりに取り組んでみたいなと思っています。

ファブレスから始まるオンライン⇔オフラインと地方⇔都市

ファブレスメーカーの商品を買ってくださったお客さんが産地・西粟倉を訪ねて、山に入ったり工場を見学したりする。また、西粟倉村を訪れてくださった方がゆくゆくはインターネットや直営店舗で商品を買ってくれる。

そんなオンライン⇔オフライン、地方⇔都市でのヒトとモノの流れをつくることができたら最高に面白いと思っています。

 

西粟倉村は観光地ではありません。

だからこそ、大きなハードを建ててたくさんのヒトを呼び込むよりも、ゆるやかなつながりの中で「1年に1度くらいはまた訪れてみたくなる場所」になる手段の一つとして、ファブレスメーカーとスクラムを組むことでいろんな可能性が広がるのではないかと思っています。

 

ということで「日本の木を使ってこんなアイデアをファブレスで商品化して販売してみたい!」というご相談がある方はお気軽にお声がけくださいね!