材木屋が狙うは「おにぎりせんべいクラッシュ」と近所のおばちゃんのおすそ分け野菜の間

「や、こんにちは」「こんちは」

「あんた最近、家に全然おらんな」「出張で外行くこと多かったんす」

「ところで、ブドウ要るか?」「え!欲しいです欲しいです」

ということで向かいのおばちゃんからブドウをいただきました。

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ナスやらトマトやらピーマンやら、この夏はとにかく夏野菜をいただいてばかりだったのですが、ついにはブドウまでいただいてしまったのでした。ありがたや。

 

「形はあんまり良うないけど、美味しかったじゃろう?」

おばちゃんのブドウは、ンもうとにかく美味しくて美味しくて。実はぷりぷりでハチ切れんばかりに詰まっているわ、口に入れてみればピューッと甘くてジューシーな果汁が飛び出すわ、アレヨアレヨと食べ切ってしまったのでした。いやはや、ごちそうさまでした。

 

「いくら味が良くても形が悪うかったら引き取ってくれんのじゃな」

「形が悪いと出荷できんし、私らおじいおばあが二人しかおらんもんで、野菜がいっぱいできても困るんじゃ」

皆が皆きれいに育つわけではないし、いくら性格が良くても、市場に出すんならやっぱり見た目も相応に大事ってことみたいだ。

小さなプランターでほそぼそと野菜を育てている自分でさえ、知らぬ間に大きくなり過ぎたオクラに驚きます。ゴーヤもまた、ようやく実がなったぞと喜んでいたら気づけばヒン曲がっていました。大きくなるのを楽しみにしていたけれど、追い打ちをかけるように先日の台風でダメになってしまいました。ごめん。

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野菜も木材も一緒だなと改めて感じたのでした。

育てられた分だけ食卓に並ぶわけではないし、植えられた分だけ木材として使われるわけではないんです。頭の片隅では分かっているつもりでも本当に忘れがちだ。

 

スギやヒノキは植えてから50年以上経ってようやく伐り出されるまでのサイズに大きくなります。

木1本のうち、丸太として山から出されるのはせいぜい3分の1〜2分の1くらい。それ以外は山に伐り捨てられてしまいます。さらに、丸太を製材して商品をつくる場合、だいたい歩留まりは30〜50%くらい。

木1本から商品にできる量は本当に限りなく少ないのだな、と数字にしてみて強く実感します。せいぜい10〜20%くらいだもの。

 

ふだん木材を加工・販売する仕事をしているにもかかわらず、スーパーマーケットに足を運んでみれば、目の前に並んでいる野菜が、見えている全てでしかない。そこには農家さんの苦労は垣間見えないし、ハネられてしまった形の悪い野菜くんは存在しません。

 

でも、おばちゃんがおすそ分けしてくれたブドウをはじめ、果物やら野菜やらは何を食べたってとびきり美味しかったのは事実です。

そして、それらは市場には流通しない不均一なものということも、また事実。口に入れる前に形でハネられてしまう。

 

仮に、向かいのおばちゃんから季節ごとに旬の野菜をおすそ分けしてもらうような木材流通ができたとしたら、とても面白いんじゃないかと思う。

やっぱり野菜と一緒で全部が全部、きれいな商品ができるわけじゃないもの。歩留まりの高い製品づくりを目指して一生懸命つくるものの、やっぱり「惜しい」商品は一定数発生してしまいます。

 

ちょっと色は悪いけれど、しっかり乾燥も効いてるし寸法も出てるよ。濃い目の色を塗って使うなら問題ないよ、50坪分だけあるよ。

そんな木材流通を自社だけではなく、木材業界全体でもっと簡単にできたら、広げられたら面白いのにって思います。

 

そのために必要なのはやっぱりコミュニケーションでしかありません。

規格品はコレ、値段はコレ、在庫はあるんで即納可!と答えるだけでは材木屋の価値ってほぼありません。お客さんの都合(それは値段だったり納期だったり)と自分たちが出来る提案をうまく組み合わせていくことでしか価値は生まれないのかもしれません。

とはいうものの、しかし、売上見込に見合うコミュニケーションコストのかけ方ってのがむずかしい。

 

なんて悶々と考えていたら、コレなんか、非常に上手に商売をしてるなぁと思ったのでした。

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これからの材木屋が目指す姿は、おにせんクラッシュと近所のおばちゃんのおすそ分け野菜の間ってのがテーマかもしれませぬ。って違うか。