林業と農業・漁業との決定的な違い。木材に鮮度は要らない?

農業と林業と漁業。「農林漁業」という言葉があるように、第一次産業として三つの産業が並べられることがありますが、林業が農業・漁業と大きく異なる点があります。

林業に鮮度の高さは必要ない?

それは鮮度の高さが望まれないということ。

農業ならば野菜、漁業ならば魚。スーパーに足を運べば「今朝とれたて」「鮮度が命!」といったコピーが並びますが、木材に鮮度は必要ありません。鮮度は出来る限り低い方がよいのです。

林業で求められるのは乾いた干物

言い換えれば、ドライフルーツや干物のような状態が好まれるということ。しっかり乾燥した状態の木材が必要とされるのです。

一般的な内装材や構造材では、15%〜20%程度の含水率にまで落とすため、木材を乾燥機に入れ乾燥させる工程があります。この乾燥工程が製造リードタイムを長くする原因の一つです。

木材の状態にもよりますが、短くて2〜3日、長ければ2週間もの間、乾燥工程に時間をかけます。例えば、梁をはじめ横架材のような大きなサイズはもちろん乾燥にも時間がかかる。

木材業は在庫商売の要素が強い業界

「今週中にどうしても欲しい!」と依頼のあった製品を丸太から挽いていては到底納期に間に合いません。

乾燥工程に1週間も費やしていては納期に間に合わないので、乾燥済みの半製品を一定量持っておく必要があります。木材業は在庫商売の要素が非常に強い業界なのです。

 

とはいうものの、木材は自然素材。最終製品をいつまでも置いておくというわけにはいきません。

自然のものなので、いくらしっかり乾燥しても丁寧に選別しても、時間が経てばやっぱり曲がったり反れたりしてしまいます。含水率が基準値より高くなってしまうこともあるし、ヒノキであれば完成したヤニが出てしまうこともしばしば。

最終製品をいつまでも在庫として置いておくというわけにもいきません。それでは品質を担保できなくなってしまうのです。

 

とれたてピチピチ(というか水分ズブズブ)の木材は乾燥が足りないのでダメ。最終製品を長期間のあいだ在庫として置いておくことは品質上、難しい。これらの木材特性をふまえて、価格はもちろん納期と品質を担保しなければならないなかで、どのように工場を運営し、製品を展開していくのか。

スーパーに並ぶ色とりどりの野菜や特売品の鮮魚を見比べながら、そんなことを考えたのでした。