くくり罠の猟師のハダです。
ふだんは岡山・西粟倉村の材木屋「西粟倉・森の学校」に勤務しながらスキマ時間で狩猟に取り組んでいます。
今回はくくり罠で捕獲したオス鹿を解体・調理するまでの一連の流れをまとめました。
- どんな罠で鹿を捕獲するのか知りたい
- 鹿の解体手順を知りたい
- 鹿肉を使ったジビエレシピはどんなものあるか知りたい
オス鹿を捕獲・解体したその日に簡単ジビエレシピ・シチューを作りました。
合わせて頭蓋骨はトロフィーにするべくポリデント鍋でグツグツと煮ています。
ハダ
前日に引き続き、2日連続で鹿を捕獲。リズムが出てきて嬉しいです。
空弾きを繰り返す急斜面の罠場
2週間ほど前から新たに開拓した罠場は急斜面。
足跡を確認すると数匹の鹿が降りているようです。
急斜面は地面に埋めたくくり罠が露出してしまったり、鹿が足を置く位置を特定しにくいので罠を設置しにくい印象があります。
当初は、急斜面ではなく平地で撒き餌+石ぐるり+くくり罠の小林式捕獲法を試していましたが、獣道に設置していなかったのか全く反応はありませんでした。
平地ではなかなか反応が無いので、急斜面に餌なしのくくり罠を設置。
急斜面でくくり罠を地面に隠しにくいのでオリモ製作販売のOM-30型をチョイス。
穴を深く彫り込まなくても設置可能で、ワイヤーとバネが露出しているので地面に埋めやすいことが特徴です。
しかし、毎日のように空弾きを繰り返してしまいます。
繰り返すこと計3回。う〜ん、悔しい…!
石が多く水分を含んだ粘土質の土のため罠の反応が鈍くなってしまうのもしれません。
この場所では難しいと判断して少し山を上り、傾斜が緩い場所に餌なしのくくり罠を設置しました。
土砂降りの雨の中、前日の足跡に合わせて渾身のくくり罠を設置。
2歳&30kg程度のオス鹿がくくり罠を設置した翌朝に捕獲
前日に小さなメス鹿を捕獲することができたので、さすがに2日連続は無いかな〜とあまり期待せずに毎朝の見回りを開始。
【狩猟】オリモ式くくり罠で1歳の雌シカを捕獲別の場所に期待値の高い罠場があったのですが、その罠場は空弾きでした。
そして、今回の罠場を確認しにいくと、頭上でガサガサと物音が聞こえます。
2日連続で鹿が獲れた!
オス鹿だー!!
罠設置から翌朝ヒットは嬉しいっ!
2日連続でシカを捕獲
角が生え替わり途中の30kg程度の雄シカ
昨日土砂降りの雨の中でくくり罠を設置したおかげで翌朝にヒット
ワイヤーが木に絡まっていたおかげで止め刺しはしやすかったけどワイヤーが壊れてしまっていた
解体して食うぞ pic.twitter.com/KPDtphs3OO— ハダ|材木屋トレラン猟師 (@hada_tomohiro) February 23, 2020
小さな角が生えています。
長さも無く枝も分かれていないので1歳&30kg程度でしょうか。
サイズもなかなか良く太さがあります。
罠に掛かってからかなり暴れまわったのでしょうか
木にワイヤーがしっかりと絡みついてほとんど身動きが取れない状態になっていました。
オス鹿は止め刺しをする際に角で攻撃しようと向かってくるのでワイヤーが短いのは好都合です。
バールで頭を殴打し、ナイフを首に刺して血抜きをします。
勢いよく赤黒い血が流れ地面が濡れていきます。
血抜きの間に罠を外そうと思ったものの、ワイヤーが激しく木に絡みついてずいぶんと手間取ってしまいました。
さらに、ワイヤーもかなり傷んでしまい壊れてしまっていました。
道路からかなり近い場所なので山を転がり降りるようにオス鹿と一緒に下山。
今日は村内の獣肉解体施設がお休みなので自宅前で解体します。
オス鹿を自宅前で解体
鹿の解体手順は以下です。
- 洗浄(個体の泥やダニを洗い流す)
- 頭や脚先の切断(解体時に邪魔にならないように)
- 大腸の封鎖(解体中に糞が出ないように)
- 腹出し(内臓を取り出す)
- 皮剥ぎ
- 部位別の切り分け(後脚、前脚、ロース、ネックなど大まかに分ける)
- 精肉(細かくカットしたり、シンタマなど特定部位を取り出す)
- パッキング(ジッパー付袋に収納し冷凍する)
解体施設で解体する場合は獣を逆さ吊りして解体をすることがほとんどですが、自宅前なので軽トラの荷台とウッドデッキを使って簡易的に解体することにしました。
洗浄
まずは鹿の泥やダニを落とすべく水で洗浄。
夏に獲れる鹿はお腹にびっしりとダニが付いていることも少なくありませんが冬の鹿は少なめです。
ノズルをジェットに設定して脚先やお腹まわりを重点的に洗い流します。
腹出し時に糞が散乱しないように肛門に水を流し込んで糞を洗い出しておくのも重要なポイント。
頭や脚先の切断
皮剥ぎや切り出し時に脚先は邪魔になるので先に切っておきます。
ワイヤーカッターやペンチがあると便利なのですが、今回は出刃包丁で叩いて切れ目を入れてボキッと折りました。
合わせて頭も切り離します。
頭蓋骨からは先に舌(タン)を取り出します。
鹿タンはコリコリとした歯応えで美味しいので大好物です。
舌を取り出した頭蓋骨は後ほどトロフィーづくりに使用します。
大腸の封鎖
肛門の周りをナイフで切り出して大腸を引き抜きます。
大腸を紐で縛り上げます。
これは解体中に糞が散乱しないようにするためです。
腹出し
お腹に少しずつ切れ目を入れ腹出しをします。
毛が肉に付いたり、内臓に穴が空かないように注意深く切り込みを入れます。
重く柔らかい内臓に穴を空けないように少しずつ取り出していきます。
いつもはここで心臓と肝臓を取り出して食用にしますが、今回は肝臓の状態が良くなかったため、心臓のみ取り出しました。
内臓自体にかなり重さがあるので内臓を取り出し終わるとずいぶんと軽くなります。
皮剥ぎ
猪や穴熊など脂身が多い獣は皮剥ぎが大変ですが、鹿は脂身が少ないので皮剥ぎがしやすいです。
ナイフで皮と肉の間をなぞり、スゥースゥーと切り離していきます。
肉に毛が付くと後々切り分ける際に手間取るので気をつけます。
お尻などは皮を引っ張るとズルズルと剥けるので簡単。
逆さ吊りした状態での皮剥ぎは簡単なのですが、軽トラの荷台の上での皮剥ぎはずいぶんと手間取ってしまいました。
皮剥ぎ中に鹿が転がってしまい、皮を引っ張りながら剥ぐのが難しいんですね。
肉に毛も大量に付いてしまったので今後の自宅解体では検討の余地がありそうです。
部位別に切り分け
その後は大まかに部位別に肉を切り分けていきます。
後脚、前脚、背ロース、内ロース(フィレ)、ネック
と5つの部位を切り出しました。
くくり罠が掛かっていた右前脚は関節が外れており内出血もひどかったので肉になりませんでした。
バーベキュー用に骨付きアバラ肉も取り出したいところですが、冷凍庫のキャパオーバーで断念。
精肉
次は大まかに切り分けた部位を精肉していきます。
後脚1つとっても、スネ、内もも、外もも、シンタマなどで構成されているので1つ1つ切り分けていきます。
塊で保存する以外の肉はぶつ切りにしてジッパー付袋に入れるためにカットもしていきます。
ここで毛が付いた肉や傷んだ箇所はトリミングして取り除きます。
パッキング
最後にジッパー付袋に収納します。
カットして下味を付けて冷凍しておくと調理が簡単になるのでひと手間をかけます。
塊のまま凍らせておくと解凍→下味処理→調理と時間が掛かるため意欲が下がってしまうので。
調理酒のみ、オリーブオイル+塩、焼き肉のタレなどその時の気分で簡単に下味を付けて冷凍します。
以上で鹿の解体手順は終わりです。
朝9時30分に解体を始めて冷凍庫への収納が終わったのは13時30分。4時間も掛かってしまいました。
頭蓋骨は煮込んでトロフィーづくりに挑戦
鹿の頭蓋骨をポリデント鍋に突っ込んで煮てるけどグツグツ感がすごい pic.twitter.com/sYkcY8Fiao
— ハダ|材木屋トレラン猟師 (@hada_tomohiro) February 23, 2020
今回捕獲したオス鹿はチョコンと生え変わりの角が生えていて可愛かったので頭蓋骨トロフィーづくりにチャレンジしてみます。
土に埋めるとノノモン(野の者)に掘り返されて行方不明になるし、水に漬け込むのは時間が掛かり過ぎてしまうので、今回は煮てみました。
自宅前で火を焚いて、鍋で頭蓋骨をグツグツと煮込んでいきます。
友人猟師から入れ歯洗浄剤・ポリデントがたんぱく質分解に効果的との情報を聞き、ポリデント鍋で煮込んでみました。
泡がすごい…!ミント臭が爽やか…!
4-5時間ぐつぐつ煮込んで放ったらかしにしておいたら皮が取れ、頭蓋骨になりました。
小さな角で悪魔感があります。。
まだ細かい部分に肉片が残っているので乾燥させてきれいにしたいと思います。
鹿もも肉・タン・ハツを使った簡単ジビエシチュー
今朝捕獲・解体したオス鹿のもも肉・タン・ハツでさっそくシチューを作ってみました。
玉ねぎ・ニンジン・しめじ・にんにく、唐辛子などと一緒に鍋で煮て、シチュー用のルウで味を整えるだけの簡単ジビエレシピ。
薪ストーブで長時間じっくり煮込むことで鹿肉がほろほろに仕上がります。
鹿肉は脂身が少ないので煮込むと固くなってしまうことが多いのですが、薪ストーブで一晩煮込んだら箸で切れる程度に柔らかく仕上がりました。
玉ねぎは溶けて完全になくなった…!
大量に作り込んで1晩で食べ切らず、2晩3晩と味の変化を楽しみたいですね。
【イッタラ サルパネヴァ・キャセロール】かもめ食堂でお馴染み、薪ストーブに似合う鋳鉄+ホーロー製お鍋今回のシチューはイッタラのサルパネヴァ・キャセロールに具材を突っ込んで薪ストーブの上に置いておくだけ。
煮込み料理は煮込み時間が味の決め手ですが、薪ストーブならガス代が掛からず熱エネルギーを活用して調理できるのでお気に入りです。
4ヶ月間の猟期終了まで残り1ヶ月弱
今回のオス鹿で令和1年度の猟期(11月15日〜3月15日)の捕獲数は以下になりました。
- 2019年11月22日 … オス鹿
- 2020年1月4日 … メス鹿
- 2020年1月5日 … オス鹿
- 2020年2月13日 … オス鹿
- 2020年2月18日 … メス鹿
- 2020年2月22日 … メス鹿
- 2020年2月23日 … オス鹿(NEW!)
11月・12月・1月は出張が多く狩猟に割ける時間が少なかったため全く獣が獲れませんでした。
2月から本腰を入れて山に入り始めたら結果も追いついてきました。
なんとか猟期中に10匹は獲りたいものです。
あわよくば猪も獲りたい…!