シューズ取り付け式のランニングパワーメーター・STRYD(ストライド)のレビューです。
- STRYDが気になっているが価格が高いので購入を悩んでいる
- ランニングパワーによるトレーニング管理に興味がある
- パワートレーニングでよく聞くFTPってどうやって計測するの?
ランナーの練習強度の指標として月間走行距離がよく挙げられます。
しかし、走行距離だけで練習量を測るとトレーニング強度や疲労度を把握することができないので「今月はたくさん走れた=走力が上がった」と思い込んでしまいがちです。
パワートレーニング管理サービス・TRAINING PEAKS(トレーニングピークス)と連携し、ランニングパワーを計測することでトレーニングの質を定量的に管理しています。
【上級者向け】パワー計測によるトレーニング管理を徹底したいランナー向け
- 価格 32,000円(税込)→USサイトで購入すると219$(23,200円程度)
- 取付 シューズ(シューレース)に取り付けて計測
- 充電 USB充電で最大20時間稼働 → 100マイルレースでは電池がもたない
- 機能 独自のパワー指標・Critical Power(CP)によるトレーニング管理が可能
「ランニングをパワーで管理すると言われてもピンとこない」と思っていましたが、ランニングパワーを計測することでトレーニングの強度や疲労度を数値化できるようになりました。
「今日のランニングはかなりシンドかったなぁ」といった身体的な感覚とランニングパワーに基づいたトレーニング強度をすり合わせることができ、ランニングの質を定量的に管理できるのがパワートレーニングの魅力です。
走行距離ではなくランニングパワー=質でトレーニング管理をする
サイクリストは良くご存じのパワートレーニングですが、最近ではランニングにも普及してきました。
月間走行距離や獲得標高からトレーニングの量を把握できても質は判断できない
ランナーの日々のトレーニング指標として、月間(週間)走行距離(km)が引き合いに出されることが多くあります。
「サブ3(フルマラソン3時間切り)を目指すなら少なくとも月間走行距離は300kmを越えなきゃ」といったように。
しかし、月間走行距離や獲得標高はあくまでトレーニングの「量」を把握するための指標であって、トレーニングの「質や強度」を示す指標ではありません。
例えば10kmのランニングをするにしても、ペースや獲得標高、気温差、風などの要因でトレーニングの質や強度は大きく変化します。
トレイルランニングでは同じ10kmを走るにしても獲得標高やコース難易度によって強度が異なりますし、走行ペースや心拍数も一定しませんよね。
心拍数によってトレーニング強度を測る方法もありますが、心拍数は上昇するまでにはタイムラグがあるので「いまこの瞬間の強度」は把握することができません。
また、心拍数は体温や外気温、水分摂取量、緊張度 or 興奮度(レース前、カフェイン摂取)、などで変化するため、その時の体調に左右されることが大きいと言えます。
ランニングパワーを把握し、トレーニング強度や疲労度を数値化する
ランニングパワーは以下の数式で示すことができます。
ランニングパワー(W) = 体重 × 加速度 × 速度
単位はワット(W)です。ようするにランニングにおける馬力ですね。
体重が重ければ重いほど、スピードが速ければ速いほどパワーは高くなりますし、気温差や風といった環境要因も速度や加速度に影響を与えます。
ランニングパワーを計測することで、トレーニングを量ではなく質で評価したり疲労度を数値化することができます。
ランニングパワーメーター・STRYDの概要
シューズ(シューレース)に取り付けるランニングパワーメーター
STRYD(ストライド)は2016年にアメリカで産声を上げた元祖ランニングパワーメーターです。
STRYDはサイクリストには普及していたパワートレーニングをランニングに取り込むことを可能にしました。
ランニングパワーメーター=STRYDとも言える代名詞的デバイスです。
日本では2017年頃からランニング専門店・STRIDE LABが取り扱いを開始しました。
- 価格 32,000円(税込) → USサイトで購入すると219ドル(23,200円程度)
- 重さ 8g
- 取付 シューズ(シューレース)に取り付けて計測
- 充電 USB充電で最大20時間駆動
- 機能 独自のパワー指標・Critical Power(CP)によるトレーニング管理が可能
- 付属 シューズ取付用クリップは黒・オレンジの2色あり
日本国内ではSTRIDE LABや井原知一さんのTomo’s Pit等で購入することができますが、税込37,000円とお高め。
USサイトから直接購入すると送料込みで219ドル(23,200円程度)で購入することができます。
本当に届くのか不安でしたが(ビビリ)、発注後1週間とすぐ届きました。
説明書はなく付属品も非常に少ない
STRYDのメリット・デメリットは以下です。
- ランニングパワー計測のブレが少なく正確に数値を取り出しやすい
- 専用アプリ・Power Centerでパワーに基づくトレーニング管理がしやすい
- 重さ8gでシューズに装着するのでランニング中の違和感が無い
- 最安23,200円と価格が高い
- シューズに取り付けるのでシューレースの締め直しが面倒
- 最大20時間駆動なので100マイルレースでは電池がもたない
以前は充電器に置く形式だったが取り付け式の充電形式に切り替わった
ハダは元々、トレーニング管理サービス・TRAINING PEAKSを利用する上でパワーメーターはGarmin・ランニングダイナミクスポッドを利用していました。
しかし、ランニングダイナミクスポッドのパワー計測はブレが大きく数値も高く表示される傾向がありました。
ランニングパワーが実力値以上に高く表示されてしまうとトレーニング強度も高く表示されてしまうので、トレーニングの質を定量化したくてパワートレーニングを始めたのにトレーニングの質が適切なのか分からない状態に陥ってしまいました。
より正確なデータを取り出しながらパワートレーニング管理がしたいとSTRYDに乗り換えました。
説明書なし・英語対応だが設定は簡単
STRYD本体とクリップの間にシューレースを通してシューズに取り付ける
説明書は無く、すべて英語表記なので最初の設定には苦労するかと思いきや、意外と簡単です。
他アプリとの連携も含め15〜30分ほどあれば完了しますよ。
ハダはGarminのGPSウォッチ・ForeAthlete945+STRYDでランニングデータ(ランニングパワー含む)を計測し、Garminの専用アプリ・Garmin Connect経由でSTRAVAやTRAINING PEAKSにデータをエクスポートしています。
- PCブラウザ上でSTRYDのデータ管理サービス・Power Centerに登録(メールアドレス必要)
- スマホアプリ・STRYDをダウンロードしログイン、スマホアプリ・Garmin Connectと連携する
- スマホアプリ・Connect IQからデータ項目・Stryd Zonesをダウンロード、スマホとGPSウォッチを同期
- GPSウォッチ「ラン設定→トレーニングページ→カスタムデータ→Connect IQ→Stryd Zones」からStryd Zonesをランニング中に表示可能にする
- Power Centerにて取得したランニングデータをSTRAVA、TRAINING PEAKSにエクスポートするように連携
- 設定ができていればGPSウォッチのログスタート画面で「シューズ👟」マークが点滅する
GPSウォッチ+STRYDで計測したデータをGarmin Connect経由でSTRAVAやTRAINING PEAKSへ同期
Garmin ConnectとSTRYD・Power Centerがあればトレーニング強度や週間走行距離を把握することはできますが、ハダの場合、STRAVAとTRAINING PEAKSを利用して以下のように使い分けをしています。
- STRAVA 質の管理 週間走行距離(および獲得標高)の把握
- TRAINING PEAKS 量の管理 ランニングごとのトレーニング強度の把握
STRAVAはアプリが非常に見やすい&使いやすいのでお気に入りなのですが、ランニング特化SNSとして他ランナーのランニングから刺激をもらう要素も強いです。
「今日は走りたくないなぁ」と思う日でも「〇〇さんは週に1度はインターバル練習してるんだな」「△△さんがまた六甲山を走ってる」と他人の努力を見ているとやる気が湧いてくるものです。
また、STRYDとTRAINING PEAKSはいずれもランニングパワーを元にトレーニング強度を計測することができますが、それぞれが独自の強度指標(ストレス強度指数)を用いています。
STRYDはRSS(Running Stress Score)、TRAINING PEAKSはTSS(Training Stress Score)と似たような指標ですが、それぞれの値の算出方法が異なるため、互換性はありませんのでご注意ください。
ランニングパワーメーター・STRYDで計測できるデータ
英語ということもありとっつきにくさのあるSTRYDですが、日々のトレーニングデータから様々な数値を抽出できるのでトレーニングの質を見極めるための振り返りに役立ちます。
ランニングパワーをはじめ、フォーム維持力や足のバネの残り具合を計測可能
STRYDをシューズに取り付け、Garmin等のGPSウォッチと連動することでランニングから以下のデータを計測することができます。
STRYDは日本語対応しておらず英語表記なので各用語をまとめました。
- Running Stress Score(RSS) STRYD独自のストレス強度指数
- Critical Power(CP) クリティカルパワー(閾値)
- Power ランニングパワー(単位:ワット W)
- Cadence ピッチ数
- Form Power ランニングフォームを維持する力
- Ground Time 接地時間
- Leg Spring Stiffness(LSS) 足のバネの残り具合
- Vertical Oscillation 上下動
- Air Power 空気抵抗
主目的であるランニングパワーの計測をはじめ、ピッチ数や接地時間、上下動や空気抵抗を測ることができます。
ランニングフォーム維持力や足のバネの残り具合を計測できる点も非常に面白いです。
Critical Powerを元にランニング強度を計算できる
追い込んだトレーニングを繰り返すうちにCritical Powerは向上していきます。
ハダの現在のCritical Powerは287W、171cm&66kgなので重量1kgあたりのCritical Powerは4.35W/kgです。
STRYDを使い始めた当初は259Wだったので10%ほど上昇しています。
閾値ペース走10kmやインターバル走など追い込んだトレーニング後に上昇することが多く、データが蓄積されるにつれ変化していきます。
また、STRYDではCritical Powerに基づく5段階のStryd’s Power Zonesというものがあります。
ランニングでは走行ペースや心拍数でランニング強度を計測することが多いですが、ランニングパワーを元に強度を計測することができます。
例えば、Zone3のThreshold(閾値)のランニングパワーはCritical Powerの90〜100%とあります。
Critical Power(ハダの場合は287W)を越えず、90〜100%のランニングパワーに抑えて走ることで閾値ペースのワークアウト例である10kmのランニングを持続することができます。
また、Zone2のModerate(テンポ)では、Critical Powerの80〜90%に抑えることでフルマラソン程度の距離を走ることができると分かります。
「今日は〇〇W前後をキープして追い込んだ練習をしよう」「フルマラソンのレースでは後半でバテないようにCritical Powerの90%を越えないように抑えて走る」など、ランニングパワーを元に走行ペースを調整することができます。
特にトレイルランニングでは走行ペースが一定では無いので「Critical Powerを越えるようなパワーで登っていたら疲労が溜まり過ぎてしまうのでもう少しゆっくり登ろう」など判断することもできます。
ランニングデータからマラソンベストタイム推定が可能
STRYDで面白いのはRace Culculatorという機能でランニングデータからフルマラソンのベストタイムを推定できる点です(2020年9月現在はベータ版)。
STRYDによるとハダのフルマラソン推定ベストタイムは3時間12分13秒(±4分)とのこと。
ちなみにベストタイムは2019年12月の加古川マラソンで3時間7分4秒なのでかなり近しい数字が推定されました。精度の高さがすごいぞSTRYD!
このタイムはCritical Powerの87%である251Wで走った場合なので、30〜40kmのロング走を走る場合は251Wをターゲットにしたりと日々の練習に生きる指標になります。
ただの数字遊びかもしれませんが目標のサブ3達成に向けてモチベーションが高まりますね。
TRAINING PEAKSでトレーニングの質や疲労度を数値化する
ハダはランニングパワーメーター・STRYDで計測したパワーを元にTRAINING PEAKSでトレーニング強度や疲労度を管理しています。
英語のみ・理系的な管理画面・よく分からない単語の羅列…のとっつきにくさはありますが、慣れれば非常に使いやすいサービスですよ。
STRYDの強度指標・RSS(Running Stress Score)と非常によく似ているのですが、TRAINING PEAKSではTSS(Training Stress Score)を元にトレーニング強度や疲労を管理します。
1時間の全力疾走(と言ってもなかなかできませんが)をした場合は111TSSです。
上の図は平均ペース3分46秒/kmでペース走10kmをした時のデータです。
かなり追い込んだトレーニングでゼェゼェヒューヒューしながら走り切りましたが、平均ランニングパワーは288Wで56TSSでした。
現在は1週間に5〜6回のロードランニング(毎10〜25km程度)に取り組み、週間走行距離75kmを目安に走っていますが、週間獲得TSSは400〜500程度です。
TSS・FATIGUE・FITNESS・FORMの4つの指標を抑える
TRAINING PEAKSのキーワードを整理しましょう。
以下の4つの単位を覚えればOKです。
- TSS(Training Stress Score)= トレーニング強度
トレーニング強度や時間に基づく単位 - FATIGUE(ATL、Acute Training Load)= 疲労度
過去7日のTSSに基づく疲労度合い - FITNESS(CTL、Chronic Training Load) = トレーニング効果
過去42日のTSSに基づくトレーニング効果 - FORM(TSB、Training Stress Balance)= 現在の体調
昨日のFITNESS(CTL) − 昨日のFATIGUE(ATL)から算出した体調
トレーニングピークスは、トレーニング強度・疲労度・トレーニング効果・現在の体調、という4つの指標を元にトレーニングを管理します。
FORM(TSB、現在の体調)を意識しながらトレーニングを積み上げる
何を見たら良いのか非常に分かりにくいのですが、基本的にはFORM(TSB、現在の体調)の値を参考にすると良いです。
FORMの値による体調管理については、Darragh Murray氏のブログがたいへん参考になりました。
- レース当日は+15〜+25が理想的
- +25以上は怠け過ぎ
- +10〜+25はもっと頑張れる
- 鍛錬期は−10〜−30の維持が理想的
- -30以下が続くと怪我のリスクが高い
キーボードを叩いている現在のFORM(TSB、現在の体調)は-1で、ふくらはぎにハリがあり、肉体的にも疲れを感じます。
2020年のメインレースであるKOUMI100が3週間後に迫っているので残り1週間は追い込み、レース前2週間は徐々にトレーニング強度を下げてFORMを回復させていく予定です。
【ストラバ】STRAVAとTRAINING PEAKSの価格や使い方、管理のコツ【トレーニングピークス】【ストラバ】STRAVAとTRAINING PEAKSの価格や使い方、管理のコツ【トレーニングピークス】
TRAINING PEAKSの活用方法についてはこちらの記事にまとめたのでご覧ください。
ランニングパワーメーター・STRYDの購入方法
STRYDは日本国内ではSTRIDE LABや井原知一さんのTomo’s Pit等で購入することができますが、税込37,000円とお高め。
US版公式サイトから直接購入すると送料込みで219ドル(23,200円程度)と最安で購入することができますよ。
対応も早く発注から1週間程度で届きました。
パワートレーニングを始める前は走行距離といったトレーニング量ばかりを気にしていましたが、STRYDやTRAININGPEAKSを利用し始め、ペース走やビルドアップ走、インターバル走など質を意識したトレーニングを定期的に取り組めるようになったのが最大の収穫です。走力の向上を日に日に感じています。
【ランニングパワーメーター比較】STRYDとGarminランニングダイナミクスポッドでFTP計測してみた
STRYDを購入する以前はGarminのランニングダイナミクスポッドを使っていました。
STRYDとランニングダイナミクスポッドの2種類でパワートレーニングの重要指標であるFTPの計測に取り組んだ比較記事です。