2m以上の長モノが主流の建材流通は宅急便で運送できるモノづくりに切り替わっていく

2017年10月1日、宅配便最大手のヤマト運輸が27年ぶりに宅急便の運賃を全面改訂(個人向けの運賃を平均で15%値上げ)したことが大きなニュースになりました。

続いて、佐川急便は2017年11月12日に、日本郵便は2018年3月1日に値上げと改訂が相次ぎました。

個人向け宅配の宅急便だけではなく、ぼくたち材木屋が多用する混載便やチャーター便も同じく値上げが起こり、これからのモノづくりを考えさせられる機会になっています。

宅急便は時間指定と軒先渡しが可能だが、建材流通の主流の混載便ではそれができない

製品価格より運送費が高くなる場合もある木材流通

木材産業の主な市場である住宅産業では、構造材などの柱や内装材などのフローリングは2−4mの長さで流通することがほとんどです。

2mの商品は、宅急便の160サイズルール(幅・奥行き・高さ合計が160cm以上のモノは宅急便で運ぶことができない)を越えるため、宅急便での配送ができず、混載便もしくはチャーター便での配送が基本です。

 

チャーター便は文字通りトラックをチャーターするので時間指定ができ、トラック単位で手配するので大量の荷物を運ぶ際にメリットがあります。その分、金額は高くなります。

例えば、岡山→東京に4t車のチャーター便を飛ばすと平気で7−8万円はかかってしまいます。

 

混載便は、複数の荷主からの荷物を1台のトラックに積み合わせ輸送する配送サービス。運送費はチャーター便に比べれば安いのですが、時間指定ができなかったり、トラックの上で荷物を渡す車上渡しが原則になります。

また、4tトラックが入れない細い路地へ納品する場合は着点チャーター便の組み合わせになり、運送費が高くなることがあります。荷揚げが必要になる場合も同じように運送費が上乗せされます。

 

一度まとまった数量を納品した現場で、後日不足した少量のフローリングを都市部のマンションに追加で納品する場合がありますが、そういった場合は、製品の値段よりも運送費の方が高くなることがザラにあります。

施工現場では製品の余りが出ないように、ある程度の歩留まりを考慮したギリギリの発注量にしたい一方で、万が一不足が出ると思わぬ追加費用が発生することになってしまいます。

縦横50cmのユカハリ・タイルは女性一人でも持ち運びできるDIY向け無垢床パネル

宅急便で運べるモノづくり=送料を含めた価格設定がしやすい

木材は「重くて・安くて・かさ張る」という特性があり製品価格に対する運送費が高くなりがちです。それに加えて、昨今の運送費の上昇はかなりの痛手。ぼくたち材木屋も頭を悩ませています。

運送費がこれからも上がっていく中、どういった木製品をつくり、お客さんに届けていくのかはぼくたちにとって重要なテーマです。

 

西粟倉・森の学校のフラッグシップ的商品であるユカハリ・タイルは縦横50cm四方の無垢床パネル。

女性一人でも賃貸マンションなどの自宅で簡単にDIYで無垢床での生活を楽むことができるように開発した商品です。

 

この商品は1箱8枚入(2.0平米入=畳1枚弱)。宅急便での配送が可能送料も含めた価格設定をしています。

宅急便なので時間指定ができるし、軒先渡しができるので、マンションの20階にでも玄関まで運商業者のドライバーさんが運んでくれます。

 

施工業者への納品が当たり前である建材流通ですが、ユカハリ・タイルはエンドユーザー(一般のお客さん)が使いやすいサイズで製品づくりをすることで、DIYの施工性が高まるだけではなく、宅急便で運ぶことで運送費を下げる工夫をしています。

フローリングは2m弱の長さが基本だが施工場所に合わせて切り使いする

送料無料が当たり前だがメーカーにとっては送料は無料ではない

宅急便や混載便など運送費の上昇を止めることはできない一方でAmazonや楽天などは送料無料が当たり前になっているのは事実です。

 

自分自身、インターネットで買い物する際に後出しで送料がかかると、なぜか損した気分になってしまうものです。けれど、なぜか損した気分こそがユーザー目線でメーカーとしてはその目線でモノづくりに取り組まねばいけません。

 

具体的にはヤマト運輸の宅急便で運送可能な160サイズを生かすこと。

  • 3辺(縦・横・高さ)の合計が160cm以内
  • 重さが25kgまでの荷物

 

例えば、今まで長さ2mで製造していたフローリングを長さ1mでつくってみる。この長さなら1畳(1.62平米)ほどの量をまとめて宅急便で運ぶことができます。

 

「短いフローリングじゃ現場で張るのに手間がかかっちゃうよ」と施工業者さんから言われてしまいそうですが、運送費はもちろん、現場での選別のしやすさや施工性を高めた提案はできれば、今までの慣習を飛び越えて良い提案になるのではないかと思っています。

 

最低賃金がや運送費が上昇していく流れの中で、大工さんやユーザーの手間が少しでも減ることが求められているはずだし、現場の手間を減らすことがコストの削減にも繋がるはずです。

 

宅急便で運べて運送費は製品価格に含まれていて、時間指定や軒先渡しが可能で、おまけに現場で大工さんやユーザーの手間も省ける製品だとしたらきっと今の時代に求められるモノになるなと思ったのでした。

そして、宅急便で運べる無垢フローリングをつくろうと西粟倉・森の学校が開発したのは、この長さ90cmの直張り用の無垢フローリングです。