「ぼく、学級委員に選ばれたんだ」
夕食時、小学生になったばかりの息子がそう言った。
「ほう、すごいじゃないか」
学級委員と言えば、クラスのリーダー的存在だ。
おれが小学生の頃は、勉強もスポーツも出来て、気が利いて優しくて、クラスの人気者だけが学級委員になることができた。いわば、選ばれた者の仕事だ。
当時のおれは、学級委員からは最も遠い存在だった。
クラスの片隅でひとり静かに本を読んでいるような子どもだったし、勉強もスポーツも苦手、人見知りのせいもあって友達も少なかった。目立つことを極力避けながら過ごした小学生時代だった。
そんなおれの息子が学級委員になったのだ。
親として誇らしい。思わず感慨深くなった。
「どうして学級委員になろうと思ったんだ?」
「じゃんけんで負けたんだ。学級委員なんて誰もなりたがらないよ」