日本の木材流通は拡大造林が本格化した1950年代から、数多くの中間流通業者が連続的に介在した形態になっています。
当時と比べて木材価格が急落しているにも関わらず、中間流通の諸経費が非常にかかる高コスト構造の状態が続いています。
なぜそのような状態が続いてしまうのでしょうか。
木材流通の高コスト構造の背景には、需要と供給の時期調整のため、流通過程に生産調整の在庫が存在する点、また、在庫管理を中間流通業者が担っている点(在庫管理コストを負担している)という2点の理由があります。
川上の企業からの購入原価に、加工や情報提供などのサービス、在庫管理費用などの流通経費を加え、川下の企業に販売するため、流通過程に関与する企業が多段階になればなるほど木材価格は上昇します。
ただでさえ安い木材が中間マージンの発生によってどんどん高くなってしまうのです。
現在の木材流通では木材価格の決定権は森林所有者・森林組合にはなく、原木市場の需要者である川中に属する中間流通業者が握っていることが多くあります。そのために原木市場では木材価格が低く抑えられてしまいます。
また、原木供給者である森林所有者・森林組合は小規模に散在しています。
そのため、市場における木材需給のタイミング調整を図り、長い流通過程のどこかで在庫を抱えることが必要になります。
「中間流通業者がなくなればいいんじゃないの?」と安易に考えてしまいがちですが、必要な機能があるからこそ現在の構造が成立するはずなのです。
木材商社に身をおいて仕事に取り組む中で「ウチの会社の存在意義ってなんなんだ?」と自問する日は数えきれません。
薄利多売でマスからマスへモノを流すことが日本の林業にとって良いことなのだろうかと感じてしまうこともあります。
「(川上の企業に対して)急な受注に対応できるように過剰に製品在庫を作らせておく」
「(川下の企業に対して)在庫消化のため、お腹がいっぱいでも顧客に食わせる」
こういった状況になってしまいがちですが、この先には明るい未来などないのかもしれません。
中間流通業者を省けば全てが解決する、なんてことは絶対にありません。
大切なのはサプライチェーンの中でのそれぞれの役割と機能です。
需要の最も大きい住宅市場が縮小するなかで、小さくなるパイを皆で奪い合うことには限界があります。
新しいパイを生み出すことはもちろん大切ですが、今あるパイをどう全体で生かしきるのかという考えが薄れてしまいがちなのかもしれません。
製材工場のロジスティクスをとってみても、木材流通のサプライチェーンをとってみても、部分最適/全体最適がなんなのかを見通す必要があるように感じます。
まだまだ先は見えそうにないけれど、構造の本質への理解を深めていきたいと強く思ったのでした。