11月15日の猟期が解禁されてからおよそ二週間。それからというもの山に入る機会が格段に増えました。
シカ肉のロースト。近所のオバチャンから貰った玉ねぎでつくったソース付
去年、わな猟免許は取得していたものの、文字通りのペーパーハンター。友人の猟に同行させてもらったり、シカの解体を手伝うといった程度。
たくさん食べたのでジビエの料理はいくぶんか上手になったけれど、自分で獲ったことは未だに一度もありません。
シカ骨でラーメンの出汁をつくってみたものの、思ったように味が出ず失敗
今年こそはと狩猟者登録も済ませ、猟友会にも所属し、ようやく猟期がスタートしたのでした。初年の目標はシカ5頭!イノシシやアナグマも捕りたい!
とは言うものの、近隣の山に罠を仕掛け、毎朝のように罠の確認に行ってはガッカリする毎日。全然獲れねぇ、クソ!
探していないと道端でこれでもかとシカに出会うのに(車で轢きかけるのに)山に入って探してみると一向に見つからないから不思議なものです。
もっと簡単に獲れるものかと思っていたけれど、野生はそんなに甘くはないのでした。
村内をお客さんに案内する際に原生林や人工林を歩いたり、トレイルランニングで登山道を走ったりと日常的に山に入ることはあれど、狩猟で山に入ることとは、ずいぶんと違います。だから、おもしろいのだ。
未だ見えざるノノモン(野の者。野生の生き物のこと。村民はシカやイノシシのことをこう言う)との山中での駆け引きが楽しいんス。
「お、シカの足跡だ」と前日には見つけられなかった足跡を発見して喜ぶこともあれば、「この分かれ道でどっちに進みたくなるんだろう」とシカの気持ちになって考えてみたり(一向に分からない)。
先日も友人と入ったことのない山を新たに攻め入っては「おお!新しいのがいっぱい落ちてる!」と大のオトナ二名、クソを見て大喜び。
まだあったかいんじゃないの?と思えるほどに出来立てほやほや・ツヤツヤ輝くチョコボール(シカ製)を発見したことが嬉しくて思わず写真を撮っていました(笑)
出来立てほやほやのシカのフン
散々に山を歩き回り、納得のいく場所に罠が仕掛けられた日なんて「あー、明日の朝は獲れてそうな気がする」と酒を飲んでは明日の朝が楽しみで仕方がありません。
「全部の罠に掛かってたらどうしようなー」とありもしない想像を膨らませてはワクワクして10時には布団に入る。で、夜明けを迎え空が白んでくると同時に山に向かうのだ。
猟期が始まってからというもの、朝が来るのがちょっと楽しみになった。でも、毎朝の見回りはやっぱり暗いし寒いしシンドイし辛いのが本音。
6時じゃまだ真っ暗だし、出張で7時に村を出ることも多いし、かと言って17時でも真っ暗だ!嗚呼、これが山陰地方の中山間地よ。
山で見つけた小動物のフン。時間が経ってだいぶ乾いている
「君はホンマに物好きじゃな〜」と、近所のオッチャンに笑われるのだけれど、やっぱり当事者になってやってみないと分からないことって必ずあるものだし、良いも悪いも好きも嫌いもやってみてから決めたらいい。
昨日、近所のお肉屋さんで買った豚バラ肉も鶏ムネ肉も、誰かが家畜を育てて解体して肉にして流通させているわけで。
ただ、その過程を日常生活でイメージすることはほとんどありません。生き物が死ぬと目が曇ること。さっきまで生きていた肉が当たり前のように人肌にあたたかいこと。内臓を裂けばやっぱり糞も尿もあります。
自分で動物を捕って解体して調理して食べて、というところまで出来るようになったとすれば、また違ったものが見えてくるものかもしれません。
ありがたい命をいただけることに感謝しよう!という気持ちが湧き上がるかもしれないし、やっぱ肉は買ったほうがコスパ良いわ、とその手間を惜しむかもしれない。
何事も当事者になって実際にやってみないと本当のことは分からないのだ。
知って分かったつもりになって終わりじゃダメだ、ゼッタイ。
食っていくために金を稼げる仕事をつくること、野菜や米を育てられること、魚を釣れること、床を張り替えられること。もちろん、ノノモンを捕って解体して肉にすることだって、そう。
「生きていくために自分でなんとかできる」領域やスキルを増やしていくことは、ただ金を払って消費する側から、生産する側(=現場)にすこし寄ってみることなのだと思ったのでした。
生産する側に寄れば、額に汗をかくし、血が流れることもある。ただ、それは人生の確かな筋肉になる。
「自分の人生なんだから、とことんサバイブしないかん」
友人が酒を飲みながら言っていたこの言葉は、とても印象に残っていて。
そのサバイブする手段のひとつが狩猟かもしれないと思いながら精を出しているのが今。シカやイノシシくらい獲って捌けるようになった方が人間としてたくましいでしょ。
ただただ、未だ一匹も捕れないのが情けない悔しい。未だ会わざるノノモンには俺の浅はかさがバレているのかもしれません。