棒アイスの棒って何の木か知ってる?「ガリガリ君」赤城乳業や「あいすまんじゅう」丸永製菓に問い合わせるうちに国産材・杉の棒アイスを発見!

丸永製菓のあいすまんじゅうが大好きなハダ(@hada_tomohiro)です。

たっぷり入った小豆餡のぬたっとした食感がお気に入り。あいすまんじゅうってその大きさと重量の割に棒が貧弱だろう!と食べる度に思うのですが、その裏には何億本もの棒アイスを販売するアイスメーカーの努力が隠れているのかもしれません。

 

今日は棒アイスの棒のお話。材木屋目線でアイス棒について考えました。

アイスの棒、何の木か知っていますか?

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、アイスの棒に使われている木は「白樺(しらかば)」

 

アイスの棒をはじめ、アイス用のスプーン、割箸、爪楊枝なども白樺でつくられることが多いのですが、国内に流通しているそれらの商品のほとんどは中国産だと言われています。

割箸で言えば、国内市場の95%以上が中国産というデータもあり、ほぼ中国からの輸入でまかなわれています。

 

材質が堅く木目が美しいことから、家具用材に使われることも多く、家具や床材ではバーチと呼ばれたりしますね。また、その樹液はガムでお馴染みの人工甘味料キシリトールの原料にもなるんだとか(知りませんでした!)。他にも樹液の保湿成分を利用した化粧品など、木材部と樹液を含め、さまざまな商品に利用されています。

 

白樺は、北海道や長野など国内では寒冷な地域に分布する落葉樹。樹皮が白いことから、白樺という名前が付いたんだとか。山火事や荒廃した跡地に真っ先に芽を育む木であることから「マザーツリー(母なる木)」とも呼ばれています。

 

白樺の特徴をまとめてみるとこんな感じ。

  1. 日光を好み、成長しやすい
  2. 材質は比較的硬く、均等で緻密な木肌をもつ、木目が目立ちにくい
  3. 節が少なく反りなどの狂いも少ないため、加工しやすい

とは言うものの、上に挙げたような特徴からアイスの棒には白樺が使われていますというのはなんだか説明不足というか、他の樹種でも良いのでは?と納得いかず…

なぜアイス棒は白樺?アイスメーカーに直接聞いてみた

分からないことはなんでも聞いてみよう!ということで、棒アイスの代名詞とも言える「ガリガリ君」でお馴染みの赤城乳業さんに直接聞いてみました(笑)

 

そして、分かったのは「白樺は匂いが少なく、味もしにくい」ということ。ナルホド!口に入れるものですもんね。

赤城乳業さんでは中国から製品となったアイス棒を仕入れられているようで、おそらくほとんどのアイスメーカーも同じように中国産のアイス棒を使っているとのことでした。

 

せめてもう一社、ということで問い合わせてみたところ、あいすまんじゅうの丸永製菓さんでも同じ回答をいただきました。

「スイマセン。アイスの棒の樹種を知りたいのですが…」というヘンな質問にも関わらず、たいへん丁寧に対応していただきました。アイスメーカーさんのカスタマーサポートに感服です…

 

他にも調べてみると、白樺は加工がしやすく、表面がつるつるでササクレができにくいという意見もありました。白樺でないとダメ、というわけではなく、なにより廉価で製品が手に入ることが一番の理由なのかもしれません。

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棒アイス市場は450億円

さすがにアイスメーカーさんも棒の仕入れ価格は教えてくれませんでしたが、インターネット上では1本1円以下で仕入れているとの情報も。

Amazonで調べてみると、100本入・150円、1.5円/本のものがありました。アイスメーカーが何万本・何億本と大ロットで仕入れれば0.5円/本くらいまで下がるのかしら。

 

ガリガリ君は年間販売数が5億本を突破したとのことで、原料の一部となるアイス棒の仕入額が0.5円違うだけでも利益率は大きく変わりそうですね。

 

ちまみに上のグラフによると、アイスクリームの市場規模は4,500億円。さらに、スティック型(棒アイス)は450億円。アイスクリーム市場全体の10%が棒アイス市場ということでした。アイスクリーム市場が年々ゆるやかに拡大していることにも驚き。

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国産材アイス棒を使った棒アイスがあった!その名は北極!

コスト大優先で棒の仕入れ価格は1円以下…さすがに国産材の棒を使ったアイスなんて無いんじゃないかと思っていましたが、国産材を使った棒アイスがありました!

 

大阪なんば・戎橋で昭和20年創業、アイスキャンディーを作り続けて60年の老舗「北極。大阪難波駅近くに直営店舗もあります。

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なんと北極のアイスキャンディーの棒は林業地として有名な奈良・吉野産。割箸をアイスの棒として使い、樹種は杉と桧を使っているとのこと。

 

斜めに挿してあるのもいつもと違った雰囲気でかわいいですね。「斜めに刺さっている理由は最後まで味を楽しんでもらえるよう、落ちにくく、食べやすくするためです」って大手がやらないのは何故でしょうか?

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たかがアイスの棒と言ってしまえばそれまでだけど、小豆などの素材と同じく棒だって国産材にこだわり続け、ここまで丁寧に説明していることに非常に好感をもちます。ふつうはアイスメーカーのWEBに木取り図なんて書きませんよね(笑)

 

コスト優先で中国産の白樺のアイス棒に切り替えるのは簡単ですもの。棒一本にもこだわるメーカーとしての姿勢が垣間見えます。

国産材どころか吉野の割箸ですから、きっと仕入れ価格は1円以下なんてことはないでしょう。製造原価で2−3円、仕入れ単価でも4−5円/本くらいあるのかな。でも、棒の分だけアイスの値段が上がったとしても買いたいと思うのは自分が材木屋だからでしょうか。

食べれば食べるほど森が豊かになるアイス

そもそも割り箸自体が奈良・吉野で始まったもの。江戸時代末期に酒樽の製造工程で余った杉の端材を惜しんで考案されました。

つまり、北極は、日本における割箸文化の出発点である吉野の割箸をアイスの棒につかっているということです。

 

国産材の市場が大きくなればなるほど、間伐が促され、日本の森がきれいで豊かになっていくとすれば、北極のアイスキャンディーだって、それを促す素晴らしい商品です。

 

美味しく食べれば食べるほど森が豊かになることにつながるアイスキャンディーなんて、とっても素敵じゃないか。北極、すげえ。国産の素材にとことんこだわって、美味しいことはもちろん、食べながら日本の森のことも学べるアイスキャンディー、みたいな。

 

アイス部分は木の形にして、緑色(メロン味とか)、山から木を間伐するようにお客さん自ら抜き取って食べてもらう販売方法なんてやってみたいな。お祭りなんかで出店してみたい。

  • お、そこのニイチャン、センスがいいねぇ。この山から間引くなら次はその木(=アイス)だろうねぇ
  • 後の人に美味しく食べてもらいたいから、劣勢木はボクが先に食べておくね!

なんて会話を想像してにやにや。北極のアイスキャンディーのことをはじめて知り、早急に大阪出張を設定して買いに行こうとワクワクしているのでした。