材木屋は、木の翻訳家であり企画屋である

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◯仕事の幅、お客さんの幅

材木屋として、ちいさな会社ではあるものの幅広い仕事をさせていただく機会が増えてきました。ワリバシ一膳の販売から公共建築物の木材供給まで、なんでもやります。

それにあわせて、お客さんの層も幅広くなってきました。
B-to-Bの仕事だけではなくB-to-C、つまり一般のお客さんにも材木を販売しています。

ゼネコン、建築士、工務店、大工さん、一般のお客さん……他にも、企画会社と一緒に商品開発をすることもあれば、学校法人や名だたる大企業に木のある空間や木製品を提案することもあります。

当たり前のように毎日は過ぎていくけれど、素晴らしい機会の連続なんだなと。

それはいろんなひとに木の話をする機会があるということ。
仕事とお客さんの幅が広いおかげで、兎にも角にも様々な年齡や地域・職種のひとたちに木の話をすることができるのです。

施工業者と価格や等級品質の打ち合わせをしたと思えば、賃貸アパートに暮らす主婦の方に杉の特徴について説明をしたり。次の日には、山を案内したり製造所の設備について説明したり。そんな日々の連続。

◯材木屋は、木の翻訳家であり企画屋である

大切なことは、相手の立場で、相手に伝わる言語で話すこと。

「スギジョウコブシホンザネ」
「インニッサンノスギタルキ」

奇々怪々な業界用語では決してコミュニケーションをとることはできないのです。

材木屋は、木の翻訳家であり企画屋なんだと強く思います。

立米(立方メートル)単価で仕入れた丸太を、一枚いくら/坪いくらといった単位に変換した製品に加工する仕事。

無垢が表現できる空間や快適さ、メンテナンス方法などを分かりやすく説明する仕事。

プラスチックや鉄にはない、木の特徴を生かした企画や製品を提案する仕事。

やっぱり木は自然のものだから、工業製品とはすこし違います。
色味も木目だって一枚一枚表情が違うし、節だってある。反れたり曲がったり割れたりすることも、もちろんあります。

◯ほら、木って面白いでしょ

だから木は使いにくい!なんてことにならないように、単位を変え、言語を変え、企画を練り、いろんなひとに、もっともっと木を使ってもらえるようにすることが材木屋の仕事だと思うのです。

そして「木っていろんなことができるね」ひいては「林業って面白いね」と、すこしでも多くのひとが山や木に思いを馳せる瞬間が増えたら、これ以上の喜びはありません。

木を買ってもらおうとすると、ソロバンがチラついてうまくいかないことも多いけれど、木をつかってどんなことができるかを一緒に考えるとアイデアが出る。

へんに日本の林業が…とか、森林環境が…なんて叫ぶ必要はなくて、「ほら、木って面白いでしょ」と自分たちが楽しみながら他のひとにも喜んでもらえることをやる方がよっぽど大事だ。

木を使う理由を諭すよりも、楽しいうねりをつくる方が必要に決まってる。