天然木ってどんな樹種の木?雑貨屋の木製品が「天然木」と表示されている謎の答えは消費者庁にあった!

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天然木」という言葉を聞いて、皆さんはどんな木をイメージしますか?

雑貨屋さんや家具屋さんをのぞいてみると、「天然木」という表記が意外と多いことに気づきます。木のスプーンや、お箸、椅子やテーブルなど…表示ラベルを見てみると、そこには「天然木」と記してあります。

木なのは分かる。どんな樹種かが知りたい

材木屋で働いているせいもあってか、「天然木って何だよ!樹種は何なの?」と非常に気になってしまいます。けれど、商品ラベルには答えが記されていません。

木であることは見たら分かる。肝心の樹種が知りたいのに、それが分かりません。天然木という表示は情報としてまったく意味のないもののように感じてしまいます。

 

これって、スーパーマーケットの鮮魚コーナーで「さかな」と表記してあるアジが売っていたり、野菜コーナーで「やさい」と表記してあるキャベツが売っていることと同じだと思うんです。いや、それは分かりますwって。

食品においては、当たり前のように産地や生産者名が記されていますが、木材は不思議とそういうわけにはいかないようです。

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Googleで「天然木 樹種」と画像検索してみると、さまざまな商品が見つかります。天然木の一枚板、天然木のスツール、天然木の時計…検索の上位にあがる画像元の多くはショッピングサイト。

それらの中には商品ページをこと細かく見てみても、その天然木がどんな樹種なのか記されていない場合も多くあります。

 

そもそも本当に樹種が分からない木を使ってできているのか(製造工程を疑ってしまいますね)、樹種名を書いても馴染みの無い名前だから省略しているのか(モンキーポッドとかw)、製品の製造ロットによって樹種が変わってしまうからなのか(木だったらなんでもOKみたいな。そんなんでいいのか?)とか、どういった理由が根本にあるのでしょうか。疑問は増すばかり。

天然じゃない木なんてない。天然木という奇妙な言葉

「天然」という言葉には、「人為が加わっていないこと」や「自然のままであること」といった意味があります。天然水、天然パーマ、天然記念物、天然素材…などがその例えですね。

けれど、そもそも天然ではない木なんてこの世にはありません。そう考えると、天然木という表現はとても奇妙なものに感じてしまいます。

 

では、天然木と反対の意味をもつ言葉はなんなのでしょうか?

意味から考えると「人工木」という表現がそれに当たります。

 

人工的につくられた木材風の素材、つまり、木粉と樹脂を配合した木目調の人工木材や、木目そっくりのプリントを施したポリ塩化ビニル(PVC)などとの対義の意味を持つものが天然木なのかもしれません。

「人工木材や木目調PVCとは違ってホンモノの木なんですよ〜!」とアピールするための「天然木」表記だとしたら、すこし悲しくなってしまいます。

 

ホンモノの木の方が、ずっとずっと暮らしに馴染みのある素材であるはずなのに、いつからどちらが当たり前になってしまったんでしょうか。

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天然木の答えは、消費者庁にあった

消費者庁のWEB内「製品別品質表示の手引き」のページを見てみると、上記図のような表示基準があることが分かりました。

 

机およびテーブル」の材料表示を見てみると、そもそも材料の種類が「天然木(ここでは集成材や巾接ぎ材も可)」であれば、それ以上の表記は任意であることが分かりました。

一方、「革又は合成皮革を製品の全部又は一部に使用して製造した手袋」(長いですね)の材料表示を見てみると、牛や馬や豚など、材料として使用した革がどんな生物のものかを記載しなければいけないのです。

 

革製品は牛なのか豚なのか必ず明記する必要があるのに、木材の場合は天然であればOKってなんだか納得がいきませんが…木だって生きてるぞ!

つまり、木だったら樹種までは書かなくていいよ!というのが消費者庁の定める木材に関する品質基準だったのでした。

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どんな木か表記しなくてよい=消費者が知ることができない、ということだけど本当にそれでいいの?

とはいうものの、どんな木か表記しなくてもよい、ということは、消費者が知ることができないということでもあります。

 

何十万円も払って購入した一枚板のダイニングテーブルの樹種が分からなかったら、いくらカッコよくても、なんだか物足りないかもしれません。

毎日のように口に入れる木製スプーンがどんな樹種か分からなかったら、どこの国でどのように加工されたか分からず、その安全性を心配するかもしれません。

 

買い物って自分自身の納得感がなによりも大事です。

安かろう悪かろうで買うものもたくさんあるけれど、「これは!」とこだわって(それなりのお金を払って)購入したものには相応の愛着が沸き、長く使い続けられるものだと思います。

産地やつくり手の顔が見えるモノづくりが価値になる

「山に生えている木が製品になるまでの流れがよく分かりました」

「こんなに手間をかけて作っているだなんて知りませんでした」

仕事柄、お客さんに西粟倉の山をはじめ、ウチの工場など、村内を案内することが多々あります。

 

その中で、ウチの工場に足を運んで、実際にモノづくりの現場を見学くださったお客さんは、こんな言葉をかけてくださることがあります。

「手間ひまかけて丁寧につくっている工場の現場を見学することができて、これなら安心して使いたいと思えました

そして、購入を決めてくださるお客さんも。

きっとモノとしての品質以上の価値を感じてくださっているということだと思うんです。材木屋冥利に尽きる仕事です。

 

 

ふとした疑問から天然木について調べてみましたが、買い物には自分自身の納得感が大事だからこそ、何にお金を払っているかが見えたほうが安心できるのだと改めて思ったのでした。

 

「ウチの家の床には西粟倉村の杉を使っていてね」

「西粟倉・森の学校というおもしろい材木屋さんがあってね」

お客さんが思わず自慢したくなるようなモノづくりをしていきたいなと思ったのでした。