蟹や波に見えるのは気のせい?石州瓦に隠された秘密のデザイン

西粟倉村のお隣、美作市の大原には古町という地区があります。

かつては鳥取(因幡)から姫路(播磨)までを結ぶ因幡街道の宿場町として栄え、江戸時代には参勤交代の道でもありました。

 

西粟倉村に遊びに来てくれたお客さんに美しい町並みを案内することもあれば、車があまり通らないためランニングコースとしてもよく通るこの地区。

実は足を運ぶたびに気になっているものがあります。そう、それは瓦です、カワラ。

瓦は全国各地で生産されていますが、良質の粘土が豊富に取れ、さらに交通の便が良い「三州(愛知県西部)」「淡路(兵庫県淡路島)」「石州(島根県西部)」が三大産地として栄え、日本三大瓦と呼ばれています。

古町や西粟倉村など岡山県北は島根からのアクセスが良いため、屋根には石州瓦が張られているところをよく目にします。赤褐色の屋根が多いのはそのためでしょう。

 

で、なぜ瓦が気になるかというと、軒先に取り付けられる軒瓦のデザインがかわいいんですよ。年代やメーカーによって模様が違うのか、さまざまなデザインを見ることができます。

これがもっともよく見かける柄。カニさんマーク。

島根だからカニって安直過ぎるだろ…と思っていたのですが、どうやら万十唐草(まんじゅうからくさ)模様というらしい。

これは波のようなデザイン。

朝日が昇っている

「イセや」と読めます。伊勢屋という瓦メーカーでもあったのでしょうか

真ん中に「大」の文字

探せば探すほどいろんなデザインの瓦が見つかるけれど、インターネット上を彷徨ってみても、肝心のデザインの由来などはなかなか見つけることができません。

 

どうやら蟹でも波でも朝日でもなく、すべては唐草模様らしい。自分のイメージする(泥棒の風呂敷のような)唐草模様とはだいぶ違いますが、当時のトレンドも反映されたデザインなのでしょうか。

こうして何十年何百年前の瓦が現在でも残っていることは、それだけ石州瓦の品質が高いことを示しているわけです。歴史が品質を証明する。

 

きっと瓦にもリーバイスのビンテージデニムのように赤耳やビッグEといった歴史の変遷に伴う独自の特徴があるのかもしれませんね。ヴィンテージ瓦なんてあったら面白いのに。

「うわ、江戸後期モデルでこんなに保存状態が良いのは激レアですよ!国宝級っす」なんて瓦の楽しみ方があったら素敵だなと妄想が膨らむのでした。