「重い・安い・かさ張る」木材は物流の敵?

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大手牛丼チェーン・吉野家のコンセプトは「うまい・やすい・はやい」。誰もが一度は耳にしたことがあるフレーズでしょう。

一方で、木材の特性は「重い・安い・かさ張る」。物流に適さない三拍子が揃っています。木材と物流は切っても切れない密接な関係性をもっており、物流システムを整えることが木材業において重要な鍵となります。

「材の値段はいいんだけどねぇ、運賃込みの金額で考えるとチョットねぇ…」日々、小さな村の材木屋(の営業マン)として働いていると、こんな意見をいただくことがあります。そう、運賃が高くついてしまう。

遠方への長距離配送や急な納期対応のためにチャーター便などを用意するとやはり運賃は高くなってしまいます。混載便にすればある程度の運賃は安くなるものの、納品日の指定ができない場合も。納期と運賃が日々、天秤にかけられています。

ぼく自身、インターネットで買い物をする時には配送料のことなんて頭からすっぽりと抜け落ちてしまっていることが多い。結果、合計金額を見てビックリ。送料高ぇよ!となぜか損をした気分になってしまう。モノを運ぶ、というプロセスにも費用がかかっていることを忘れがちです。

日本の木材流通は拡大造林が本格化した1950年代から、数多くの中間流通業者が連続的に介在した形態になっています。当時と比べて木材価格が急落しているにも関わらず、中間流通の諸経費が非常にかかる高コスト構造の状態が続いています。

木材流通の高コスト構造の背景には、需要と供給の時期調整のため、流通過程に生産調整の在庫が存在する点、また、在庫管理を中間流通業者が担っている点(在庫管理コストを負担している)という2点の理由があります。本来なら安い(はずの)木材が中間マージンの発生によってどんどん高くなってしまうのです。

木材業は非常に製造リードタイムの長い産業です。
「来週中にどうしても欲しい!」と依頼のあった製品を丸太から挽いていては到底納期には間に合いません。乾燥工程に1週間を費やしていては納期に間に合わないのだから、在庫を一定量持っておく必要があります。在庫商売の側面が非常に強い業界なのです。つまり、在庫管理コストが発生しているということ。

また、自社で挽くことのできない寸法や加工の注文があった場合や、自社のみで指定された木材を納期までに間に合わせることのできない場合は同業者から仕入れることも多々あります。結果、中間マージン+横持ち運賃が発生してしまいます。すると、「おたくの材はちょっと高いねぇ」なんて話になってしまう。

これらが「重い・安い・かさ張る」という特性をもつ木材、数多くの中間流通業者が連続的に介在した木材流通構造、製造リードタイムが長い木材業、が引き起こす結果。

そういった文脈を踏まえて、すごいなぁと関心してしまうのがホームセンター市場です。

国内で4,500店舗近くあると言われているホームセンターでは、早朝営業&プロ業者向けのラインナップを揃える店舗が増えています。施工現場での即使用を考慮して商品種はプロ向けに絞り込み、建築・土木・電器・設備関連の資材や工具、金物等の品揃えを充実させています。もちろん、木材をはじめとした建築用材のラインナップも充実。

豊富な店舗数と大きな敷地面積、早朝営業にプロ業者向けラインナップ。そして安いときたもんだ。こりゃかなわん!

以前お話を伺った大工さんは「問屋で買ってもホームセンターで買っても値段は大して変わらないし、在庫を抱えなくて済むからホームセンターはよく利用している」とおっしゃっていました。早朝から営業しているので現場へ行く前に資材を購入できる。種類は豊富で値段は問屋と大して変わらない。自社で在庫を抱えなくて済む。となれば、プロ業者もホームセンターを利用しないわけがありません。ホームセンターは木材との親和性が非常に高いのです。

「重い・安い・かさ張る」物流に適さない木材を、お客さんにとっての「うまい(質が良い)・(値段が)やすい・(納期が)はやい」を満たすためにできることってなんだろう。

「ウチの材は年輪が緻密でねぇ」「色味がきれいだよ」といった定性的な木材特性をプロモーションするよりも、「納品日の◯日前までにご注文いただければ必ずお届けします」「二ヶ月以上前にご注文いただければ20%OFFです」といったサービス(約束)をプロモーションするべきなのだと感じています。木材業はもっとサービス業に近づいていく必要があります。