ローテクな木材産業に必要なQCD+α

20150429

 

木材業はローテク産業だ。

いわゆるLow-Technology。そして、生モノの意味としてのRaw。二つの意味でのローテク産業なのだと感じています。

木材業には、精密機械のようなミクロン単位での加工は必要とされません。せいぜい加工精度はコンマ何ミリ程度まで。製造工程も(基本的には)丸太を割って、乾燥して、仕上げる、と非常にシンプルなもの。

また、世に二つと同じものはない立木や丸太を加工し、一定の規格と品質を満たす工業製品に仕上げる必要があります。含水率は15%未満だったり、寸法精度は+1.0mmだったり。でも、やっぱり反れたり曲がったり割れたりということは避けられない。だからこそ、非常にクレームが多い業界でもあります。

そういったローテク産業だからこそ、QCD[品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)]が非常に重要になるのだと感じています。生産効率が高く、低価格で高品質な商品をつくり、一定の製品在庫を持っており納期も早い製材工場は圧倒的に強い。

年間60万立米以上の原木をつぶすような国内トップクラスの超大型製材工場に比べれば、ウチは年間数千立米程度の原木消費量しかない小さな村の製造所。QCDの分野で(特にCostの点で)まともに勝負して勝てるわけがないのかもしれません。だからこそ、QCDの追求は実直に進めていく一方で、+αのサービスが必要ではないかと常々感じています。

材木には基本的に商品力はほとんどありません。

ローテク産業だからこそ、あの企業しかつくることのできない特異で高度な技術をもった商品力の高い商品というのもほとんどないのかもしれません。真似しようと思えば、いくらでもできる商品は世の中に溢れているけれど、採算を合わせるための生産効率の追求だったり、営業販路を持っていなかったり。つくってはみたものの、計画よりも売れなかった、なんて話は世の中にあふれています。

だからこそ、商品ではなく、材木屋としてのサービスを追求する方法が必要だと感じています。お客さんが急なトラブルで困った時や、ふとかゆいところに手が届くような、材木屋としてのサービス。

それは在庫状況が常に最新で一目瞭然のWEBサービスなのかもしれないし、2ヶ月以上前から注文してくださったお客さんには割引して販売するようなANA顔負けの早割サービスなのかもしれません。図面を送ってくれたら必要なフローリングの必要数を計算して見積もりを提案してくれるサービスなんてのもよい。DIYに特化した誰でも簡単に使える3DのCADサービスもあったら嬉しい。

 

材木屋の仕事は、指定された木材を納期までに届けるだけじゃない。

お客さんの手に木材が届くまで、木材を使った空間が出来るまでのプロセスの中で、どんな価値を提供するのかが大事なんだなぁと改めて考え込むゴールデンウィーク終盤なのでした。

「鶏口となるも牛後となるなかれ。市場のある部分に対して、自社製品が最善の選択肢であると示すことが出来れば、そのセグメントでリーダーになれる」なんてフィリップ・コトラーの格言の真意を理解できる日は遠く険しい。