乳がん啓発でチェンソーがピンク色に!ハスクバーナ社のVR体験ゲームは、女性進出を見据えたニッチな市場にソーシャルが効く好事例

スウェーデンのチェンソーメーカーとして有名なハスクバーナ(Husqvarna)社が提供する、世界初の枝払い・伐採のオンライン・バーチャル・リアリティ(VR)体験ゲーム「ハスクバーナ・リンバージャック(Husqvarna Limberjack)」。そのVR体験ゲーム内に登場するチェンソーが、ピンク色に変更されました。

ハスクバーナと言えば、コーポレートカラーでもあるオレンジ色をメインに配色したチェンソーが印象的ですが、なぜピンク色になったのでしょうか?

pink

日本でも12人に1人がかかると言われる乳がんを啓発するためのピンクリボン運動

これは1980年代からアメリカではじまった乳がんの啓発運動「ピンクリボン運動」に合わせたもの。

日本でも2000年頃から急速に広まり、毎年10月のピンクリボン月間にはさまざまな取り組みが行われています。10月に入ってからは一斉にキャンペーンやイベント、ネット募金が行われ、目にしたことのあるひとも多いと思います。

生涯に乳がんを患う日本人女性は、現在、12人に1人とまで言われているようです。乳がんは早期発見できれば治癒率が高いため、セルフチェックや定期検診を促すこともピンクリボン運動の目的の一つです。

 

わたし自身、祖母が乳がんで乳房を切除したこともあり、毎年ピンクリボン運動に合わせてどんな取り組みが行われているか気になってはいたのですが、まさかチェンソーメーカーのハスクバーナ社がこんな取り組みをしているとは知りませんでした。

ハスクバーナ社の公式Instagramアカウントにもピンク色のチェンソーの投稿がありました(何と書いてあるのかまったく分かりませんがw)。

当たり前のようにInstagramだけではなくTwitterも。もちろん、Facebookでも(相変わらず読めませんw)。

ただゲーム内のチェンソーをピンク色に替えただけではなくて、未来の女性林業従事者へのメッセージ

共同通信社のプレスリリース記事には以下のコメント。

ハスクバーナのPR&コミュニケーション部門のMargaretha Finnstedtディレクターは「ピンク色のチェーンソーは、木と森の世話をして過ごす、世界中の女性伐採人とアーボリストに対する我々の認識のシンボルです。この小さな取り組みが、乳がんに対する意識向上と治療方法を見つけるための資金調達に役立つことを願っています」と述べました。

 

ただゲームに出てくるチェンソーの色を替えただけじゃんw

と言ってしまえばそれ以上でもそれ以下でもないのですが、いちチェンソーメーカーが時流に合わせてこういった取り組みを行っていること自体がなによりも素晴らしいことだと感じます。

 

チェンソーを販売するハスクバーナ社のもっとも大きなクライアントは林業会社。日本においても、林業界はいわばオトコの業界で、女性の林業従事者は圧倒的に少ないのが現状です。

一方で、林業や木材に関心をもった女性が増えているのも事実で、ぼくの周りにも林業界に転職した女性や、林業サークルを立ち上げた女性がいます。制度はもちろん、高性能林業機会の普及でいっそう女性の林業界進出は進んでいくのだろうと思います。

 

西粟倉村でも、女性の林業従事者は村をあげて渇望していますので、林業や森に関心のある女性は役場までお問い合わせください!

Instagramには女性 ✕ 林業を意識したハスクバーナ社の投稿。

女性用林業アイテムなんて存在していないニッチな市場だからこそ、ソーシャルが効く

日本の林業界って当たり前のようにオトコが標準の業界なので、そもそも女性用のアイテムが売っていないんです。つまり、女性用林業アイテムの市場が存在していません。

服はダボダボのシルエットだし、足袋や靴は女性用のサイズが少ないし、機械はやっぱり重いし。なんじゃこりゃってカラーリングも多い。

でも、それに困っている林業従事者の友人女性がいることも確かなので、欲しいと思うひとは少なからずいるはずです。

 

そうなった時にこの冒頭のピンクリボンと掛け合わせたVR体験ゲームやSNSの投稿を見たら、女性の林業従事者は多少値段が高くても、ハスクバーナ社の商品を買いたくなると思うんです。

モノと情報がありふれた時代の買い物で大事なのってやっぱり「個人の納得感」だから、なにより共感が必要です。

 

「コスパ考えたら国産のゼノアだけど、企業として好きなのはやっぱりハスクバーナだよね!」なんて感じで盛り上がっている女性林業トーク、聞いてみたいもんです。

「ウチの業界・お客さんには関係ないから…」じゃなくて。規格よりも企画が大事

林業界だけではなくて、木材業界に位置するぼくたち材木屋こそ、冒頭のような時流に乗った取り組みが必要なのかもしれません。

 

木材業界は中間流通業者が多くサプライチェーンが長いため、エンドユーザーの顔が見えないことが非常に多い業界です。木材を納めた工務店の名前は知っているけれど、どんな施主さんがどんな思いでその材料を選んだかなんて分かることはほとんどありません。

一方で、ピンクリボン、ハロウィン、クリスマス、正月、バレンタイン…一年を通してこれからもさまざまなイベントがあります。それを「ウチの業界とは、ウチのお客さんとは関係ないから…」と諦めるのはもったいないことかもしれませんね。

 

ウチの会社のECメディア「みんなの材木屋」で、杉と桧の強度の違いを比較するために、スイカ割り用の棒をつくって実証してみる(そして、棒と一緒に鳥取県産スイカを売るw)企画がソーシャル上でバズったことがあるけれど、そういう大真面目にふざけるノリをもっと大事にしたいなと思ったのでした。

こんな業界だからこそ、ポップでキャッチーなノリで楽しみながら働きたいし、必要なのは規格よりも企画だ!

最後に

ちなみに冒頭で紹介したハスクバーナ社の世界初の枝払い・伐採のオンライン・バーチャル・リアリティ(VR)体験ゲーム「ハスクバーナ・リンバージャック(Husqvarna Limberjack)」のPVがこちら。

ピンクリボン運動と掛け合わせたマーケティングといい、SNSの活用といい、VR体験ゲームといい、チェンソーメーカーとは思えない取り組みです。スウェーデン製ゆえに高価でお洒落なチェンソー、という認識が完全に覆ったのでした。すげえ…!