以前、こんな記事を書きました。イタリアを代表する工業デザイナー・Enzo Mari(エンツォ・マーリ)が1974年にデザインしたセルフメイド・チェア「sedia1」をDIYでつくってみたんです。
[DIY]イタリアの巨匠エンツォ・マーリの「sedia1」をつくってみた
はじめての割には満足の出来
必要となる材料は少ないし、工具はインパクトドライバーのみ、所要時間も3〜4時間と、はじめてながら簡単につくることができました。DIY初心者がつくった割には、(椅子づくりの懸念点である)構造もしっかりしているし、使い心地も◎で満足の出来。
我が家ではダイニングテーブル代わりの「F TABLE」と合わせて置いており、ごはんを食べたり、PCを触ったり、本を読んだり、このイスに座って多くの時間を過ごしています。
はじめてつくってみて&しばらく使ってみて、ある程度は満足しているものの、改善点もいくつか見つかりました。ビスの留め方やら、塗装の方法やら、座面の角度やら…。なにより食器と同じでイスもペアであった方が便利。
だったら、もう一度つくってみよう!と再チャレンジすることにしたのでした。
材料も工具も少なくて簡単
木材の必要寸法や数量の詳細はインターネット上に「sedia1」の図面が公開されているので参考にしてください。今回つくったものは実際の規格と比べて少々厚みを大きく、幅は狭いが二枚で対応、長さは同じ、といった具合にしています。この辺りは多少違ってもなんとかなります。
木材:スギ(計6種類)
- A) 厚:2cm、幅:9.2cm、 長:46.6cm …4枚
- B) 厚:2cm、幅:9.2cm、 長:44.8cm …4枚
- B’)厚:2cm、幅:18.4cm、長:44.8cm …1枚 B’はB:2枚でも代用可
- C) 厚:2cm、幅:9.2cm、 長:42.8cm …4枚
- D) 厚:2cm、幅:3.8cm、 長:61.0cm …2本
- E) 厚:2cm、幅:3.8cm、 長:44.0cm …4本
工具/道具
- インパクトドライバー
- 木工用ビス
- 塗料(今回はターナー色彩社の塗料を使用)
- 塗装用のウエス(布切れ)
前回はヒノキのフローリングの端材を使いましたが、今回は住宅向けのスギの窓枠材(の余り)を使用することに。
基本的に必要なのは 2.0 ✕ 9.2cm と 2.0 ✕ 3.8cm の二種類の板材のみ。あとは長さを変えるだけ。厚みや幅を加工するのは機械が必要になるので、DIYだとなかなか難しいところ。sedia1は材料の種類が少なくて済むのでDIY初心者にやさしいですね。
また、前回は組み立て後にOSMOカラーを塗りましたが、今回は木材のカット後に塗装することに。その方が一枚一枚を丁寧に塗りやすくなるし、部分的にカラーの切り替えもできるかなと。
わずか3ステップの製作工程
- 材料を寸法にカット|1.0時間
- 木材の塗装|1.0時間
- 組み立て|1.0時間
椅子づくりに必要なのはたったこれだけ3ステップでございます。
今回は、お昼休憩の空き時間や仕事が終わりの夕方や早朝を利用してサクっとつくりました。すでに一度つくって工程もイメージできていたので、ほとんど手が止まることもありませんでした。もはや日曜大工ではなくて平日スキマ時間DIY!
実際につくってみた
さっそくつくっていきます。まずは材料のカットから。
今回は、住宅向けのスギの窓枠材(の余り)を使用しました。もっとも長い材料で60cmちょっとの長さなので、余った材料で事足りるのがうれしい。
次は塗装です。今回使ったのはこちらの塗料。
ターナー色彩社のESHA(ホワイト)/ミルクペイント(ハニーマスタード)の二種類。
ESHAは亜麻仁油と松ヤニからできた安全性の高い浸透系塗料。表面に塗膜を作らずに浸透・保護し、木肌を生かしたナチュラルな発色になります。
ミルクペイントは文字通り、ミルク原料を使用した水性塗料。アーリーアメリカンな色調で、クリーミーでマットな仕上がりに。
刷毛塗りではなく、簡単にウエス(布切れ)を使って拭き塗りすることに。薄く塗り広げ、木目を残すようにしました。
背もたれ部分のB’のみ、アクセントとしてミルクペイントのハニーマスタードで淡い黄色に。それ以外はESHAのホワイトで白く塗りました。
一日ほど置いて乾かしたものがこちら。木目は残っているし、赤や白といったスギの色身のバラつきも小さくなり、統一感のある印象に。いい感じです。
さあ、ここから組み立てていきます。
というものの、組み立ては非常に簡単。インパクトドライバーをつかってビスでバシバシと揉んでいくだけです。仮止め用のボンドも今回は使いませんでした。早さ&手軽さ重視!
なんて言っていたらインパクトの先を木材にぶつけて傷つけてしまいました。下穴くらい空けてからビスで揉んだらよかったかも。反省…
アレヨアレヨとだいぶ形になってきました。あとは座面と背もたれを取り付けるのみ。
前回の反省点である座面と背もたれの角度については自分の身体に合わせながら何度も調整しました。
はい!完成!
今回は角面の面取りもなし。こだわらずにゴツゴツしたシルエットとかわいいカラーを楽しもうかなと。やわらかいスギ材なのでガシガシ使い込みたいと思います。家に持って帰るときにさっそくドアにぶつけて傷ついたけど気にせんわ!
DIYが大前提のデザイン家具
今回つくったsedia1は、木材と釘だけで簡単に家具が組み立てられるということを具体化するプロジェクトの一環として生みだされ、椅子だけではなく、テーブルや棚、キャビネット、ベッドなど、さまざまな家具が発表されました。
図面や必要な材料の詳細はエンツォ・マーリの著書「Autoprogettazione」に記されていますが、インターネット上でもいくつかの図面が公開されています。
紹介されているほぼすべての家具が、1~2種類の部材しか使っておらず(しかも手に入れやすい材料で)、のこぎりで直角に切って釘を打ち付けるだけで完成できるようになっています。ようは自分で手をかけてつくることが前提のDIYデザイン家具。
今でこそDIYという言葉が一般的になってきているものの、40年以上も前の1974年に発表したということがとても面白いなと。1974年は昭和49年、巨人軍の長島茂男が現役を引退した年。ハダはまだ生まれてすらいません。
DIYで0から何かをつくるって大変です。もちろん、その大変さを楽しむのがDIYの醍醐味なのだけれど。イスは座るものなので構造の計算が必要な場合もあるし、ぼくは以前、ハイスツールづくりに挑戦して見事に失敗しました。
sedia1は世界的工業デザイナーのエンツォ・マーリがDIYを前提にデザインした折り紙付きの家具。工具もほとんど必要ないし、材料も少ない。手軽なDIYで暮らしの道具をつくってみたいという方に全力でおすすめします。
ちなみにsedia1は、必要な木材(パイン集成材)と釘をパッケージにした組み立てキットがインターネット上で販売されているのですが、それがなかなかのお値段(なんと四万円弱ッ!)。断然、自分で材料を選んでつくる方がお得だし、いっそう楽しめるはずですよ。
最近では、DIYのワークショップを開催するDIYショップや工務店も増えてきているし、DIYワークショップに特化した木材プレカットサービスなんて面白いのかも。そんな時にこのsedia1はバッチリだなと思ったのでした。