ランニングパワーメーター2種類でFTP計測をしてみました。
実際に着用しているSTRYD(ストライド)とGarmin・ランニングダイナミクスポッドのそれぞれの特徴をまとました。
- ランニングパワーによるトレーニング管理に興味がある
- パワートレーニングでよく聞くFTPってどうやって計測するの?
- STRYD(ストライド)とGarmin・ランニングダイナミクスポッドのどちらを買うか悩んでいる
ランニングパワーによるトレーニング管理をTRAINING PEAKS(トレーニングピークス)を利用して取り組んでいます。
パワートレーニングでは、最重要指標とも言えるFTPがきちんと計測できていないと強度や疲労度が曖昧になってしまいがち。
GarminのGPSウォッチ・ForeAthlete945を愛用していたのでランニングダイナミクスポッドを購入して計測していたのですが、元祖ランニングパワーメーター・STRYDを新たに購入しました。
STRYDとランニングダイナミクスポッドについて比較してみました。
【上級者向け】パワー計測によるトレーニング管理を徹底したいランナー向け
- 価格 32,000円(税込) → USサイトで購入すると219ドル(23,200円程度)
- 取付 シューズ(シューレース)に取り付けて計測
- 充電 USB充電で最大20時間稼働 → 100マイルレースでは電池がもたない
- 機能 独自のパワー指標・Critical Power(CP)によるトレーニング管理が可能
【初心者向け】パワートレーニングを始めてみたいGarminウォッチユーザー向け
- 価格 9,240円(税込)
- 取付 ショートパンツ背面腰部に取り付けて計測
- 充電 取替式のコイン型リチウム電池で最大1年程度使用可能 → 100マイルもOK
- 機能 ピッチやストライド幅、地面接地時間、上下動比などを計測可能
ランナーの練習強度の指標として月間走行距離がよく挙げられます。
しかし、走行距離だけで練習量を測るとトレーニング強度や疲労度を把握することができないので「今月はたくさん走れた=走力が上がった」と思い込んでしまいがち。
ランニングパワーによるトレーニング管理をすることでトレーニング強度や疲労度を数値で表して定量化できるのでより効率的な練習や休息が取れるようになり、走力の向上や怪我の防止にも繋がります。
走行距離ではなくパワーに基づき、トレーニングの質を管理する
サイクリストは良くご存じのパワートレーニングですが、最近ではランニングにも普及してきました。
「ランニングをパワーで管理すると言われてもピンとこない」とハダ自身も思っていましたが、実際にパワートレーニングを取り入れることでトレーニングの強度や疲労度を数値化できるようになりました。
「今日のランニングはかなりシンドかったなぁ」といった身体的な感覚とパワーに基づいたトレーニング強度をすり合わせることができるのが良い点です。
月間走行距離や獲得標高からトレーニングの量を把握できても質は判断できない
ランナーの日々のトレーニング指標として、月間(週間)走行距離(km)が引き合いに出されることが多くあります。
「サブ3(フルマラソン3時間切り)を目指すなら少なくとも月間走行距離は300kmを越えなきゃ」といったように。
トレイルランナーならば1ヶ月あたりの獲得標高も指標にすることが多いですね。
しかし、月間走行距離や獲得標高はあくまでトレーニングの「量」を把握するための指標であって、トレーニングの「質や強度」を示す指標ではありません。
例えば10kmのランニングをするにしても、ペースや獲得標高、気温差、風などの要因でトレーニングの質や強度は大きく変化します。
特にトレイルランニングでは同じ10kmを走るにしても獲得標高やコース難易度によって強度が異なります。
マラソンと比較すると走行ペースや心拍数も一定しませんよね。
心拍数によってトレーニング強度を測る方法もありますが、心拍数が上昇するまでにはタイムラグがあるので「いまこの瞬間の強度」は把握することができません。
また、心拍数は体温や外気温、水分摂取量、緊張度 or 興奮度(レース前、カフェイン摂取)、などで変化してしまいます。
つまり、その時の体調に左右されることが大きいと言えます。
心拍数とランニングパワーを合わせて分析することでトレーニング効果をいっそう高められると言われています。
ランニングパワーを把握し、トレーニング強度や疲労度を数値化する
ランニングにおいてパワーと言うと聞き慣れませんが、ランニングパワーは以下の数式で示すことができます。
ランニングパワー(W) = 体重 × 加速度 × 速度
単位はワット(W)です。ようするにランニングにおける馬力ですね。
体重が重ければ重いほど、スピードが速ければ速いほどパワーは高くなりますし、気温差や風といった環境要因も速度や加速度に影響を与えます。
TRAINING PEAKSでランニングパワーに基づいたトレーニング管理をする
ランニングパワーに基づくトレーニング管理はTRAINING PEAKS(トレーニングピークス)というアプリ(ブラウザ・スマホ)で取り組んでいます。
TRAINING PEAKSでは今回紹介するようなランニングパワーメーターを着用してランニングパワーを計測してトレーニング強度や疲労度を数値化することができます。
TRAINING PEAKSでは独自指標TSS(Training Stress Score)を計算する上でFTPが必要です。
1時間の全力走をした場合のTSSが111TSSです。
TSSに基づいてトレーニング効果(FITNESS、CTL)や疲労度(FATIGUE、ATL)を算出することができるので「筋肉痛は少ないけど疲労度が溜まってるから今日は軽めのランニングにしよう」「今回のランニングは◯◯TSSだったから追い込めた」と数値から判断することができます。
週間走行距離ではなく週間獲得TSSを700と設定してトレーニングに取り組むランナーもいます。
【ストラバ】STRAVAとTRAINING PEAKSの価格や使い方、管理のコツ【トレーニングピークス】【ストラバ】STRAVAとTRAINING PEAKSの価格や使い方、管理のコツ【トレーニングピークス】
TRAINING PEAKSについてはこちらの記事にまとめましたのでぜひお読みください。
TRAINING PEAKSでランニングパワーに基づいたトレーニング管理をする
FTPはFunctional Threshold Powerの略で機能的作業閾値パワーと訳されます。
自転車のパワートレーニングにもFTPは出てくるため、ランニングパワーはrFTPwと表記されることもあります。
簡単に言えばFTPは1時間維持できる最大出力、1時間の全力走の平均パワーです。
全力走を1時間取り組み、その平均パワーを算出すればFTPが計測できますが、想像するだけでシンドいので今回は手軽にできる(といってもキツいですが)3分-9分走法でFTPを計測します。
FTPの数値を把握することでTRAINING PEAKSのTSSも変わるので(上図)、パワートレーニングを始める上で必ず把握しておかなければいけない数値です。
シューズに取り付けるパワーメーター・STRYD
STRYD(ストライド)は2016年にアメリカで産声を上げた元祖ランニングパワーメーターです。
日本では2017年頃からランニング専門店・STRIDE LABが取り扱いを開始しました。
STRYDはサイクリストには普及していたパワートレーニングをランニングに取り込むことを可能にし、ランニングパワーメーター=STRYDと言える代名詞的なデバイスです。
- 価格 32,000円(税込) → USサイトで購入すると219ドル(23,200円程度)
- 重さ 8g
- 取付 シューズ(シューレース)に取り付けて計測
- 充電 USB充電で最大20時間駆動
- 機能 独自のパワー指標・Critical Power(CP)によるトレーニング管理が可能
日本国内ではSTRIDE LABや井原知一さんのTomo’s Pit等で購入することができますが、税込37,000円とお高め。
USサイトから直接購入すると送料込みで219ドル(23,200円程度)で購入することができます。
本当に届くのか不安でしたが(ビビリ)、発注後1週間とすぐ届きました。
STRYDのメリット・デメリットは以下です。
メリット
- ランニングパワー計測のブレが少なく正確に数値を取り出しやすい
- 専用アプリ・Power Centerでパワーに基づくトレーニング管理がしやすい
- 重さ8gでシューズに装着するのでランニング中の違和感が無い
デメリット
- 最安23,200円と価格が高い
- シューズに取り付けるのでシューレースの締め直しが面倒
- 最大20時間駆動なので100マイルレースでは電池がもたない
ハダは元々、トレーニング管理サービス・TRAINING PEAKSを利用する上でGarmin・ランニングダイナミクスポッドを着用し始めました。
しかし、より正確なデータを取り出しながらパワートレーニング管理がしたいとSTRYDに乗り換えました。
ショーツ背面に取り付けるGarmin・ランニングダイナミクスポッド
GarminのランニングダイナミクスポッドはGPSウォッチと連動させて使用するランニングパワーメーターです。
ForeAthlete945などGarminのGPSウォッチではGarmin Connectという専用アプリ(ブラウザ、スマホ対応)でランニングデータを閲覧することができます。
ランニングダイナミクスポッドを着用してランニングすることで、ランニングパワーを始め、ピッチやストライド幅、地面接地時間、上下動比などを計測できるようになります。
- 価格 9,240円(税込)
- 重さ 12g
- 取付 ショートパンツ背面腰部に取り付けて計測
- 寿命 最大約1年間持続(毎日1時間の使用時)コイン型電池CR1632使用
- 機能 ピッチやストライド幅、地面接地時間、上下動比などを計測可能
Garmin・ランニングダイナミクスポッドのメリット・デメリットは以下です。
メリット
- Garminウォッチユーザーが手軽にパワートレーニングを始めやすい価格9,240円
- STRYDでは計測できない足の左右の接地バランスを計測可能
- 取替式コイン型リチウム電池を使用するので100マイルレースでも対応可能
デメリット
- STRYDに比べるとランニングパワーが高く表示されがちでブレも大きい
- クリップ形式なのでショートパンツの種類を選ぶ、ウエストベルトには付けにくい
- ショートパンツから外し忘れて洗濯するリスクあり
前々からパワートレーニング管理が気になっていたものの、パワーでトレーニング管理をする意味がよく分からず小難しそうで手が出せずにいました。
しかし、走行距離だけでランニングのトレーニング管理をすることに限界を感じ、TRAINING PEAKSの利用を開始し、手始めにランニングダイナミクスポッドでパワー計測をするようになりました。
定期的なFTP計測は手軽な3分-9分走法がおすすめ
1時間の全力走に取り組んで平均パワーを算出すればFTPを計測できるわけですが、そんなの絶対に無理!
他にも20分の全力走でも計測することができますが、20分の全力走も無理ッ!!
今回は手軽に取り組むことができる3分-9分走法で計測しました。
ハダ
3分-9分走法は、Jim Vance氏がTRAINING PEAKSのブログ<Running With Power: How to Find Your Run FTP>で推奨している方法で、計測するFTP誤差は±3%以内と計測精度の高さが特徴です
- 15分のウォームアップ
Warm up for 15 minutes, preparing for hard effort at the end of it - 全力走3分
Conduct a 3 minute interval at maximal effort - 徒歩5分→ジョグ10分→徒歩5分→ジョグ5分→徒歩5分(リカバリー期間)
Recover with 5 minute walk, 10 minute easy jog, 5 minute walk, and 5 minute easy jog, and 5 minute walk again, (30 minutes total) - 全力走9分
Conduct a 9 minute interval at maximal effort - クールダウン10〜15分
Cool down 10 to 15 minutes easy
手順は5ステップありますが、3分の全力走+9分の全力走と合計12分で計測することができます。
1度計測して終わりではなく1ヶ月に1回や3ヶ月に1回など定期的に計測し、その数字の変化を追うものなので、強度が低く手軽にできるものが良いですね。
3分-9分走法で計測したランニングパワー(W)を元にランニングFTPを算出します。
ランニングFTP=( 全力走3分の平均パワー + 全力走9分の平均パワー )÷ 2 × 0.9
3分の全力走と9分の全力走の各平均ランニングパワー(W)を合計し、2で割って(÷2)平均を出した数字に90%(×0.9)を掛けることでランニングFTPを計測することができます。
3分-9分走法でランニングFTPを計測してみた
STRYDとGarmin・ランニングダイナミクスポッドを着用して3分-9分走法を実施しました。
3分の全力疾走ならまだ我慢できますが、9分の全力疾走は非常に辛い…!
横っ腹は痛くなるし、足は次第に回らなくなるし、なにより時間がとてつもなく長く感じます。
3分の全力走は平均ペース2分54秒/kmで走ることができましたが、9分の全力走は平均ペース3分17秒/kmと大幅にペースダウンしてしまいました。
STRYDによるFTPは306W
STRYDの計測結果によると、FTPは306Wでした。
STRYDのブラウザアプリ・Power Centerでは1kmごとのラップ毎の平均パワーが表記されるので非常に計算しやすいです。
Garmin・ランニングダイナミクスポッドによるFTPは364W
Garmin・ランニングダイナミクスポッドの計測結果によるとFTPは364Wでした。
STRYDに比べるとランニングダイナミクスポッドはランニングパワーがいつも高くなりがちです。
印象としてはSTRYDよりもランニングダイナミクスポッドの方が15〜30%ほど高いランニングパワーが計測されます。
ランニングダイナミクスポッドの計測データはブラウザ(スマホ)アプリ・Garmin Connectで閲覧できますが、STRYDのようにラップ毎の平均パワーは算出されないのでグラフを見ながらおよその平均ランニングパワーを測らなければいけません。
ちなみにはじめてランニングダイナミクスポッドを着用し3分-9分走法でFTP計測をした際は351Wでした。
【Garmin ランニングダイナミクスポッド】ランニングパワーやFTPを計測するパワーメーター(3分-9分走法を実施)【ガーミン ランニングダイナミクスポッド】ランニングパワー・FTPやフォームを計測するパワーメーター
初めて計測した際の351Wから364Wに上昇していますが、3分全力走と9分全力走の平均パワー算出は概算値ですし、あまり精度が高いとは言えません。
Garminを購入してから月間走行距離150km→350kmと練習量がかなり増えているので走力が向上したと思いたいところですが、あくまでFTPはパワートレーニングのための指標となる数字でしかないので一喜一憂しても仕方ありませんね。
ランニングパワーメーター2種によるFTP計測まとめ
結果は以下になりました。
- STRYD FTP=306W
- ランニングダイナミクスポッド FTP=364W
ランニングダイナミクスポッドの平均パワーの算出が概算なのでぴったりの精度にはありませんが、58W(15%程度)の開きが生じる結果となりました。
STRYDとランニングダイナミクスポッドの2種を使ってみた感想としては以下です。
STRYDよりもランニングダイナミクスポッドの方が…
- 高いパワーが表示される(15〜30%程度)
- ブレが大きい
さまざまなランナーのFTP計測の結果を参考にしてみると、ランニングダイナミクスポッドのFTP=364Wはハダの走力の割に高く表示され過ぎかな…という印象です。
しばらくはSTRYDとランニングダイナミクスポッドの両方を使いながらその違いを比較してみます。
注意点としてはTRAINING PEAKSに入力するFTP値はTSSに大きな影響を与えるので主に使っている(データを反映する)ランニングパワーメーターのFTP値を入れるようにしましょう。
ハダはランニングダイナミクスポッドからSTRYDにデータを差し替え、FTP値が下がったことで日々のトレーニング強度(=TSS)も低くなりました(TSS乞食としては辛い)。
数値に一喜一憂しても仕方ないので、自分の身体感覚と数値をすり合わせるような気持ちでパワートレーニングを続けていきます。
【上級者向け】パワー計測によるトレーニング管理を徹底したいランナー向け
- 価格 32,000円(税込) → USサイトで購入すると219ドル(23,200円程度)
- 取付 シューズ(シューレース)に取り付けて計測
- 充電 USB充電で最大20時間稼働 → 100マイルレースでは電池がもたない
- 機能 独自のパワー指標・Critical Power(CP)によるトレーニング管理が可能
【初心者向け】パワートレーニングを始めてみたいGarminウォッチユーザー向け
- 価格 9,240円(税込)
- 取付 ショートパンツ背面腰部に取り付けて計測
- 充電 取替式のコイン型リチウム電池で最大1年程度使用可能 → 100マイルもOK
- 機能 ピッチやストライド幅、地面接地時間、上下動比などを計測可能
GarminのランニングダイナミクスポッドはGarmin公式サイトやAmazon、楽天市場で購入することができます。
また、STRYDは日本国内ではSTRIDE LABや井原知一さんのTomo’s Pit等で購入することができますが、税込37,000円とお高め。
USサイトから直接購入すると送料込みで219ドル(23,200円程度)で購入することができますよ。
2020年はコロナ禍でほとんどレースが開催されないため「サブ3を達成するために効率良く練習して力を付けよう」と練習に精を出し、モチベーションを維持するために導入したのが今回のランニングパワーメーター+TRAININGPEAKSでした。週間走行距離だけで練習を管理すると「今週はまだあと◯◯km足りない」と量に気を取られてしまいがちでしたが、トレーニング強度や質に目がいくようになったことが大きな収穫です。