価値にも負担にもなる工場残材。木をまるごと一本使い切るということ

photo via Rob Appleyard

 

製材工場において、原木を製材品に加工する過程では、必ずといっていいほど副産物が生産されています。

それはバーク(樹皮)やチップ、オガ粉 といった、いわゆる工場残材から生まれるもの。

 

原木の剥皮工程で発生するバークは燃料として木屑炊きボイラーで燃やすことができます。

木屑炊きボイラーを稼働し蒸気を生み出すことで、その蒸気は乾燥機に利用することができるのです。

 

チップは製紙工場に販売することができ、オガ粉は農家や牧場に販売することができます。

また、端材を圧縮し固めることでストーブ用ペレットやブリケットに加工・販売することもできます。

 

一方で、木屑炊きボイラーのない製材工場であれば、それは価値のないものになってしまいます。

 

先日、訪問させていただいた製材工場では、乾燥機や木屑炊きボイラーを有していないため、バークを産業廃棄物業者にお金を払い引き取ってもらっていました。バークは一定の高さに積み上げると、発酵し発火する可能性もあるため、定期的に回収依頼をしなければいけない、とのことでした。

 

一方、また別の製材工場では、バークやチップ、オガ粉を販売することで月あたり数千万円の売上をあげていると伺いました。製紙会社や牧場へそれらの副産物を販売しているのですが、その売上は十数名の従業員の人件費を補うまでに至るとのことでした。

 

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先日、5月30日に公表された平成25年度版「森林・林業白書」でも工場残材の利活用について触れられています。

 

「自工場で消費」「チップ等集荷業者・木材流通業者へ」といった項目が多くの割合を占めるなかで「その他へ」が13.7%。

この「その他」に該当する業者のすべてが、先に述べたような産廃業者に集荷を依頼する工場ではないですが、そういった工場も「その他」に含まれていることは事実です。

設備さえあれば利活用できるものが、設備のない製材工場にしてみれば、それはお金を払ってでも捨てたいゴミになってしまうのです。

ある製材工場の経営者の方が、製材業をマグロに例えてこうおっしゃっていました。

トロが高く売れるのは当たり前。

トロだけじゃなく、アラをいかに使い切って売るかが肝心なんだ

 

木を丸ごと一本使い切る。

その言葉の真意は、いかに「木」を需要ある商品へ加工・販売するか、に尽きるのではないかと感じています。

 

木を需要のある場所へきちんと供給すること。

当たり前のことですが、それがなかなか難しい。

 

 葉っぱビジネスの株式会社いろどりではないけれど、自然の産物である「木」もまた、使うひとや場所によって価値あるものにもなれば、負担にもなるのだということを感じたのでした。