くくり罠の猟師のハダです。
今回はイノシシやシカよりも美味しいとも言われるアナグマの捕獲・解体・レシピについて書きました。
たっぷりの甘い脂と肉々しい歯応えが楽しめる珍しいジビエですよ。
- アナグマってどんな動物?
- どうやってアナグマを解体するの?
- アナグマの味やレシピが知りたい
アナグマはハダが生活する岡山・西粟倉村では冬の猟期4ヶ月間しか捕獲できない獣です。
若手猟師仲間から生きたアナグマを(山で)いただいたので捕獲・解体・料理しました。
インターネットで調べてみると、アナグマ肉の末端価格は100gあたり1,000円越えと鶏肉の10倍近くのお値段です…!高えぇッ!!
- タヌキと合わせてムジナと呼ばれ、いわゆるタヌキ汁の肉はアナグマのものと言われている
- タヌキと似ているが、タヌキはイヌ科、アナグマはイタチ科
- 脂が多いことが特徴でホルモンのような脂と牛スジ肉のような肉々しい歯応え
- 煮込むなら味噌など濃いめの味付け、焼くならさっぱり感のあるレモンONが◎
記事にはアナグマの解体写真がありますので苦手な方は読むのをお止めください
イノシシやシカよりも美味しいとも言われジビエ専門店も欲しがるアナグマ
「アナグマがくくり罠に掛かったんですけど要りませんか?」
休日の朝、若手猟師仲間のメッセンジャーグループに連絡があり、
ハダ
欲しい欲しいーーー!!!
と即レス。
普段はイノシシやシカを狙ってくくり罠を掛けていますが、タヌキやキツネが罠に掛かってしまうこともしばしば。
タヌキやキツネならガッカリするところですが、アナグマが罠に掛かると嬉しいんです。
なぜなら、アナグマは美味しいから。
自分が捕獲していなくてもアナグマなら欲しい!食べたい!
アナグマは甘い脂が驚くほどたーっぷりで美味しいんです。
肉々しい歯応えも好み。
イノシシやシカよりも美味しいと言う猟師も多いですね。
イノシシやシカと違って狙って獲る獣ではありませんし、西粟倉村では冬の猟期4ヶ月の間しか捕獲することができません(猟期外の有害鳥獣指定をされていないため)。
イノシシやシカと違って1匹あたり十数kgと小さいので1匹あたりの肉量も少ないレア感もありますね。
東京のジビエ専門店オーナーが「アナグマが獲れたらいつでも買うので連絡くださいね」と言うくらいプロ料理人も欲しがるジビエなんですよ。
くくり罠に掛かったアナグマを捕獲
くくり罠のワイヤーが絡まり身動きが取れないアナグマ
さっそく友人と合流し、彼の自宅裏山を登っていきます。
彼はすでに6匹のアナグマを捕獲したアナグマハンター。
彼の自宅裏山にアナグマが多く生息しているのでしょうか?
アナグマばかり獲り過ぎてもうお腹いっぱい…とのことで譲ってもらいました。
タヌキに似ているがイタチ科のアナグマ
夏のアナグマは餌も少なく痩せていることが多いですが、冬は脂肪をたっぷりと蓄えた立派なアナグマが多い印象です。
アナグマはとにかく脂が美味しいので太っている個体に限りますね。
襲いかかってくることも多いアナグマだが元気が無くじっとしていた
太った猫とヌートリアくらいの中間くらいのサイズ感です。
ずんぐりボディにつぶらな瞳がかわいいアナグマ。
見た目は可愛いですが獰猛な性格なので襲いかかってきます。
すでに暴れ疲れたのか、牙を剥き出すことも無くじっとしていました。
くくり罠のワイヤーが絡まり身動きも取れなくなっています。
ずんぐりした胴体、小さな耳、パンダみたいな目とかわいい要素の多いアナグマ
捕獲するためにまずバールで頭を殴打、その後、ナイフで首を刺して血抜きをします。
殴打しても鳴くことも暴れることもありませんでした。
そして、首にナイフを突き刺すとツゥと鮮血が流れ、地面を黒く染めます。
しばらくすると、次第に呼吸が浅くなり、最後に目の色が濁りました。
タヌキに似ているけどイタチ科のアナグマの生態とは?
尖った長い爪が特徴
ムジナとも呼ばれるアナグマ。
しかし、日本ではタヌキとアナグマをまとめてムジナと呼ぶこともあるので混同しやすいですね。
俗にタヌキ汁と言われるものは、アナグマの肉を使ったものだそうです。
個体差もあると思いますが、以前捕獲したタヌキを解体してタヌキ肉入りの味噌汁にして食べてみたら獣臭がキツくて食べられませんでした。
京都出張から帰ってきたら雌タヌキがくくり罠に掛かっていた。小さくて毛がふさふさでかわいいけど有害鳥獣の対象。死んだフリをして狸寝入り pic.twitter.com/Sx121nSUsN
— ハダ|材木屋トレラン猟師 (@hada_tomohiro) April 16, 2019
アナグマはタヌキと似ているイメージですが、タヌキとは別物。
タヌキはイヌ科に属しますが、アナグマはテンやカワウソと同じイタチ科に属します。
目の周りに黒く縦に伸びている模様があり、鼻は黒くて大きいです。
タヌキは耳が三角、アナグマは丸みを帯びた形状をしていますね。
人間の足のような細長いシルエットの後脚
アナグマは夜行性の動物で、昼間は巣穴に潜んでいることが多いそうです。
クランと呼ばれる5~6頭の家族単位で生活しています。
寿命は10~15年程度と考えられて意外と長生きします。
上顎・下顎に大きな犬歯が生えている
アナグマは雑食性で昆虫やミミズはもちろん、野菜や果実も食べるため、農作物への被害も大きい動物です。
農作物へ被害を出すことから、アナグマは害獣の一種とされています。
アナグマを解体するも脂が多く皮剥ぎに苦労
白い部分は脂でその量が多さが分かる
アナグマを自宅へ持ち帰り解体をします。
以下の手順で解体をしました。
- 体の泥を洗い流す
- 腹を割いて内臓を取り出す
- 皮を剥ぐ
- 前脚・後脚・アバラ・首など大まかに切り分ける
- カットしてパッキング、冷凍
初めて1人でアナグマを解体したため、3時間とずいぶんと時間が掛かってしまいました…。
イノシシやシカの場合、心臓・肝臓・舌は非常に美味しいので必ず食べますが、アナグマの内臓は小さいので今回は肉のみ切り出しました。
解体用のナイフはモーラナイフのコンパニオンを愛用しています。ケース付&プラ製の柄で洗いやすく、価格も安いのに長持ちしますよ👆
皮剥ぎ時に皮に脂を残すのが非常に難しい
イノシシやシカのように大きく重くないので内臓を取り出したりするのは簡単でしたが、アナグマの特徴である脂を残しながら皮剥ぎするのに随分と苦労しました。
皮を引っ張りながら肉と皮の間にナイフを通し、削ぐように切り離していくのですが、皮に脂が残ってしまったり、つい力を入れ過ぎると皮に穴が空いてしまいます。
脂が多いためナイフがすぐ切れなくなってしまい、お湯で脂を落としながら皮剥ぎをしました。
皮剥ぎが終わったアナグマ。手足が泥で汚れてしまいました
気づけば皮剥ぎを終えるまでに掛かった時間は2時間。
皮に脂が付いたままの箇所も多く、もったいないことをしてしまいました。
事前に十分に泥を洗い流したつもりでしたが、特に手足などの脂が汚れてしまったことが反省点。
背ロースにナイフを入れると赤黒い肉が見えます
アナグマの肉はシカの肉と近く赤黒い色味。
背ロースからアバラにかけての部位が肉量と脂が多く美味しそうです。
骨に沿って肉を残さないように切り出していきます。
切り出した背ロース〜アバラ肉。内臓側も脂肪が多い
シカのように後脚一つをとっても、外もも・内もも・シンタマなどと筋肉の塊ごとに切り分けられるはずですが、前脚・後脚は分かりにくかったので細かくぶつ切りにしました。
前脚・後脚・ロース・首と大まかに切り分けた肉
10kgくらいの個体でしたが、およそ肉として切り出すことができたのは3-4kgほどでしょうか?
前脚・後脚・首はぶつ切りにして鍋用に、アバラ肉はブロックで切り分けてステーキ用にしました。
ジッパー付の袋に入れてパッキング
最後にこれが家庭調理のひと手間なのですが1〜2食単位でパッキングし、下味を付けてから冷凍するようにしています。
臭み抜きと時短を目的にしています。
今回は調理酒のみ、オリーブオイル+ハーブ+塩の2種類で下味処理。
肉の塊のまま冷凍してしまうと、調理をしようと思った時に解凍→下味処理→調理と時間が掛かってしまうので、解凍すれば後は煮るだけ・焼くだけ状態にして冷凍するようにしています。
アナグマジビエレシピはムジナ鍋とアバラ肉ステーキ
野菜と塩のみで味付けしたムジナ鍋
解体した夜は村の仲間と飲み会の予定があったので、アナグマを持ち寄ってジビエレシピ研究会を開催。
今回はムジナ鍋とアバラ肉ステーキを作りました。
- 前脚・後脚・首をぶつ切りにし調理酒に漬け込む
- 野菜やキノコを煮込み、塩のみで味付けした鍋に肉を入れる
- ポン酢やゴマだれを付けて食べる
- アバラ肉にオリーブオイル+ハーブ+塩で下味を付ける
- 熱したフライパンに肉を置く(皮から焼く)
- 粗挽き胡椒とレモンをかけ食べる
煮る・焼くの2通りを試したかったので上のメニューになりました。
赤身に対する脂の厚みがすごい
野菜やキノコを塩のみの味付けで煮込んだ鍋にアナグマ肉を投入し、ひと煮立ちして完成。
意外とアクの量が多いです。
20〜40代の男4人で食べたのですが、気になるお味の感想は以下でした。
- 牛ホルモンのような脂、牛すじ肉のような歯応えの肉
- ぷるぷるの脂というよりもシャリシャリ感のある固めの脂
- 脂の歯応えが良く甘みとコクがある
- 肉自体にあまり味がなく、親鶏に似たシワい食感
- 獣臭はかなり少ないが、少し乳っぽい匂いがする
塩のみでさっぱりした味付けにしましたが、濃いめの味付けの方が煮込み料理には合いそうです。
脂のシャリシャリ・ザクザク感が特徴的。食べ応えがあります。
今回はポン酢やゴマだれで食べましたが、圧倒的にゴマだれが美味しい。
味噌・生姜・にんにく・唐辛子でピリ辛味噌にして煮込むのも美味しそう。
インターネットでムジナ鍋と調べると渋谷のムジナ専門店むじなや(現在は閉店)ではすき焼きにして食べていました。
解体した雄アナグマのアバラ肉ステーキ🥩 pic.twitter.com/eNJcpzjkHg
— ハダ|材木屋トレラン猟師 (@hada_tomohiro) February 15, 2020
お次はアバラ肉のステーキです。
アバラ肉は全体の3分の1以上が脂でもはや脂ステーキ。
オリーブオイル+ハーブ+塩で下味を付けたアバラ肉のブロックをフライパンにON。
油と脂が混ざり合って弾ける音が食欲をそそります。
次第に脂が溶けていき脂の海が完成しました。
表面が脂でカリッと揚がってかなり美味しそう。
最後に粗挽き胡椒とレモンをかけて完成です。
脂が多いのでレモンをかけるとさっぱりと美味しい
- 表面はカリッと香ばしく、脂は柔らかくて美味しい
- 肉が牛や豚ほど柔らかくないので、薄切りの方が美味しい
- レモンのさっぱり感が脂との相性抜群
- 脂が多過ぎて胃がもたれそう。網焼きで脂を落として焼いた方が美味しそう
ムジナ鍋と比べるとステーキの方がメインディッシュ感があって良いですね。
煮込むよりも焼いた方が脂が柔らかいような印象でした。
個人的には脂の多いアバラ肉と粗挽き胡椒+レモンの相性が最高でした。
いずれにせよ、アナグマはコクと甘みのある脂が特徴なのでキンキンに冷えたビールとの相性が抜群でした。
アナグマ捕獲・解体・調理のまとめ
10kg程度の雄アナグマ
まるっと1日アナグマと向き合った休日でした。
脂を摂取し過ぎたせいか顔がツヤツヤしています。
アナグマを捕獲・解体・調理したまとめは以下です。
- タヌキと合わせてムジナと呼ばれ、いわゆるタヌキ汁の肉はアナグマのものと言われている
- タヌキと似ているが、タヌキはイヌ科、アナグマはイタチ科
- 脂が多いことが特徴でホルモンのような脂と牛スジ肉のような肉々しい歯応え
- 煮込むなら味噌など濃いめの味付け、焼くならさっぱり感のあるレモンONが◎
まだまだ肉はあるので引き続きアナグマジビエレシピを開発するぞー!
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