林業や木材業界で最もよく使われる単位「立米」について考えてみました。
皆さん、なんと読むか分かりますか?
鶏肉の高い安いは分かる、ハマチが800円/kgと言われても分からない
毎週のようにお肉を買いに行く近所の精肉店があります。
もはやスーパーマーケットでお肉を買わなくなるくらいお気に入りです。冷凍してもお肉がやわらかくて美味しいんですよ。毎週金土日に安売りをするので週末の買い物が密かな楽しみです。
「あ、豚バラ安いじゃん」「お、鶏の胸肉が60円切ってる」
鶏胸肉は鶏ハムにして〜、豚バラは小分けにして冷凍して〜、と主婦さながら使い方を考えながらアレもコレと買っていたら値段が高くついてしまったということがよくあります。
精肉は100gあたりの金額で売られていることがほとんどです。
そして、ひとつひとつのパックに貼られたシールにも価格(円)、内容量(g)、100gあたりの単価(円/100g)が記載されています。
豚バラ肉、鶏胸肉、鶏モモ肉など購入頻度の高いお肉の100g単価はなんとなく頭に入っている人も多いと思います。だからこそ、高い・安いを判断することができます。
一方で、「こんなに大きなハマチが800円/kg、安いよ!」と魚市場のおっちゃんに言われてもなかなかイメージがわきません。いくら重さがあったとしてもいざ捌いてみたら刺身として食べられる部分は少量しかない、なんてこともありますよね。
「1匹どれくらいの重さなの?」「結局1枚いくらなの?」
と気になってしまいます。
市場価格を比較するための指標を自分自身が持ち合わせていないことが原因で高い・安いの判断をすることができません。
木材業界の超重要単位「立米」 ← 何と読むか分かりますか?
林業や木材業界には「立米単価」という最もよく使われる指標があります。
りつまい?たちこめ…?いいえ、「りゅうべい・りゅうべ」と読みます。
メートルを漢字表記すると「米」なので、1立方メートルは1立方米。略して1立米(りゅうべ)。「㎥」←これです。縦・横・高さ1メートルの立方体の体積あたりの値段を立米単価と言います。
ちなみに、縦・横1メートル四方=1平方メートルならば1平米(へいべい、㎡)。こちらは知っている人も多いですね。
立米という単位は立っている木にも、山から伐り出される丸太にも、木材にも使われます。例えば…
「このくらいの中目の丸太なら立米1万3,000円でええで」
「三五角の桧の柱だったら立米8万くらいはもらわんと」
といった具合に木材業界では当たり前のように使われている単位です。
ぼくたち材木屋も、立米◯◯円という単位で計算し、丸太を仕入れて、製材、乾燥、加工、仕上げと工程を経て製品をつくっています。
「立米▽▽円か、この時期の丸太は高いっすねぇ」
「これくらいのサイズの板なら立米△△円くらいで挽けますね」
といったように立米単価を素材や製品の価格指標としています。
「岡山から丸太を運ぶんだったら立米◯◯円くらいで行けるわ」といった具合に、トラックに積載できる丸太の立米数を考えて、運送費の算出にも立米単位を使うこともできるので非常に便利な単位です。
規格流通している木材の相場価格が一瞬で分かる立米単価
立米単価はあくまで体積あたりの価格です。その数字をじっくりと見ていても全体の数量や加工仕様は見えてきません。
例えば、ぼくたち材木屋が無垢フローリングの加工用に仕入れる杉の丸太(原木)は立米1万3,000円で購入できるとします。
住宅建築でよく使う、120mm✕120mm✕3,000mmの杉の柱であれば立米5-6万円くらいで流通しているでしょう。丸太を製材し、人工乾燥し、仕上げのモルダー加工をしているので丸太の価格よりは立米単価が高くなっています。
杉の15mm厚・無垢フローリングは平米単価で比較されることが多いですが、無理矢理に立米単価に割り返すとすれば、1枚あたり立米16−17万円程度でしょうか。柱に比べると立米単価は高いですね。
丸太だったら立米◯万円くらい、杉の柱だったら立米◯万円くらいといったように、ある規格流通している木材であれば、立米単価の相場を知っておくと便利なことがたくさんあります。冒頭のハマチが1kgあたり800円と同じように、価格相場の動きはあるものの高い・安いを瞬間的に判断することができます。
立米単価はあくまで体積あたりの価格でしかない
ただ、立米単価はあくまで体積あたりの価格でしかないので、そこには木材の数量や加工などを正確に汲み取ることはできません。
えんぴつ程度のサイズの木が1本10円だとすると、価格を体積で割ってみると立米単価100万円を越えてしまいます。えんぴつサイズの木材を10本だけ欲しいので加工してくださいとお願いされても1本10円で加工することなんて到底できません。
また、木製椅子1脚の価格を立米単価で出そうとしても、木材の単価以上に人の手による加工費の方が高いはずです。
数量や加工も把握しないうちに「杉の上小だったら立米20万あれば準備できるよね?」といった相談を軽はずみに引き受けてしまうと痛い目をみます。
規格流通していないサイズが少量多品種あったり、超仕上げや溝加工があるような木材を全体数量を慣らして立米単価に割り返すのはうまくいきません。自分自身、お客さんの期待に応えようと何度も失敗してきました(泣)
立米単価で高い・安いを判断できるのは下記リンクのような規格流通品や原木丸太程度に留めつつ、お客さんに対しては1枚いくら1本いくらで木材の価格を伝えるべきだなと思ったのでした。
参考 2019年2月の月次市場価格中部納材協同組合