材木屋の仕事は、木材を用意することじゃない

20150502ruler

 

「スギジョウコブシホンザネ」

「インニッサンノスギタルキ」

木材業界は奇々怪々な業界用語であふれています。

一等、小節、上小節、上小無地、無節…といった曖昧な等級基準。結局、それって節は入っているの?大きさはどれくらいなの?

加えて、メーターモジュールではなく尺寸法。頭の中では「一寸って何cmだっけ?」と考えこんでしまいます。長さを理解するうえで最も一般的な「cm」や「m」という単位が使われることはほとんどありません。

 

木材業界の慣習は、一般的なエンドユーザーの感覚と乖離している印象を受けます。

業者間のやりとりならばそれでよいのかもしれません。同じ人種が同じ言語でコミュニケーションをとるのですから。一方で、エンドユーザーに対してはそれではいけないと思うのです、ゼッタイに。

 

先日、「フローリングを無垢にしたいんだけど、節のありなしとか、どんな厚さや幅がいいか全然分からないんだよね」と知り合いの方に相談をいただきました。無垢の床に憧れるけど、実際のところは価格や施工、手入れってどうなの?という疑問。

理想の部屋のイメージはあるけれど、それを実現するためにどんな木材が必要なのか、どれくらいの費用がかかるのか、どういった手順なのか、イメージの実現までのプロセスが非常に見えにくいように感じます。それが精神的なハードルとなり、木の良さを体感してもらえる機会を逃してしまう。

 

ありがたいことにウチの会社では、工務店をはじめとしたBtoBだけではなく、一般的なお客さんとのBtoCの取引も数多くさせていただいています。公共建築物の仕事も増えてきており、木材を通して材木屋という立場からさまざまな方々と仕事をさせていただけるようになりました。それに比例して、木材に関するいろんな疑問や懸念を相談いただけるようになってきました。

 

DIYやセルフリノベーションといった「自分でつくる」風潮が高まっている今だからこそ、とことんエンドユーザーの目線に立った提案が必要になってきていると感じます。お客さんが「自分でつくる」ために木材の情報をしっかりと伝える必要があります。

タブーとされる虫食いだって可愛いかもしれない。粗材の手触りだってアジがあるかもしれない。フシダラ(節だら)だっていいじゃないか。それを決めるのは、間違いなくお客さん自身であって、業者が決めることではない。

 

材木屋の仕事は指定された木材を用意することではない。木材を使いたいと思ってくださる方々に、木材を選ぶための情報を用意し提案すること。木材を使った空間を具体的にイメージしてもらえるような場となること。

場末のスナックみたいにお客さんと話し込んで、クックパッドみたいにあらゆるレシピ集があって、コンビニみたいにいつでも便利な材木屋にならねばと思ったのでした。