シカ捕獲報奨金は1頭2万円越え!サラリーマン副業狩猟は稼げるのか図解した

くくり罠の猟師のハダです。

田舎でサラリーマンとして働きながら、スキマ時間に狩猟に取り組んでいます。

「自分で食べる肉くらい自分で獲って捌けるようになりたい!」と狩猟免許を取得して4年が経ちました。

今回は、スキマ時間で狩猟に取り組んでいるサラリーマンのハダが副業としての狩猟は本当に稼ぐことができるのか図解・検証してみました。

動物の命を奪い、肉とお金がもらえる狩猟は情報がブラックボックスに入りがち

より多くの人に狩猟について理解してもらい、これから狩猟を始める人の後押しになるような情報をお伝えできればと思っています。

免許取得4年目サラリーマン猟師のスキマ時間狩猟の結果

まずは簡単に自己紹介です。ハダの狩猟経歴は以下。

  • 西粟倉村に移住した当時、同居人が狩猟免許を保持しており興味を持つ
    免許取得1年目は猟友会に入らずペーパー猟師でしたが2年目から活動
  • 現在は狩猟免許(わな猟)を取得して4年目
    鉄砲や箱罠は使っておらず、くくり罠のみで狩猟に取り組んでいます
  • 本業は材木屋「西粟倉・森の学校」の営業部長
    出張が多いのですが、村にいる週末を中心に罠を掛けています
  • 平日朝晩や休日などスキマ時間を使って狩猟に取り組む
    特に土曜日に集中的に山に入り、くくり罠を掛けています

直近の狩猟の実績は以下です。

2018年11月15日〜2019年3月15日まで4ヶ月間の猟期と2019年3月16日〜(記事執筆した現在も継続中)の有害鳥獣捕獲期の実績をまとめています。

月別捕獲数

2018年11月15日〜2019年5月末までの猟期・有害鳥獣捕獲期

  • 11月 シカ:0 イノシシ:0
  • 12月 シカ:3 イノシシ:0 タヌキ:1 キツネ:1
  • 1月 シカ:5 イノシシ:1
  • 2月 シカ:5 イノシシ:0 タヌキ:1
  • 3月 シカ:5 イノシシ:0 タヌキ:1
  • 4月 シカ:2 イノシシ:0 タヌキ:1 アナグマ:1
  • 5月 シカ:2 イノシシ:1
  • 合計 シカ:22 イノシシ:2 24頭

2018年11月15日からのおよそ7ヶ月弱でシカとイノシシ24頭を捕獲しています。

平均すると、1ヶ月あたり3.4頭のペースで捕獲。

免許取得から4年経ち、少しずつスキルが高まってきて安定的にシカやイノシシが獲れるようになってきました。

シカ1頭で2万円越えの報奨金が手に入る

山に罠を掛け、獣を獲って解体することで大量のお肉が手に入ることはもちろんですが、シカやイノシシを捕獲することで報奨金を得ることができます。

そのためには西粟倉村の場合、シカやイノシシの両耳尻尾捕獲写真鳥獣捕獲活動書を提出する必要があります。

両耳や尻尾が必要なのは、提出時にウソやズルがないようにするためですね。

報奨金は上の図のようになります。

村だけではなく、県や国の補助金も入り、組み合わせ次第ではシカ1頭が2万7,000円になることもあります。

ここは自治体や県、猟友会の方針によってかなり上下があります。

西粟倉村の場合、村の補助金だけでも確実にシカ1頭が1万円以上になります。

それだけ獣害が大きい証拠ですね。

特に西粟倉村はイノシシよりもシカの被害が大きいので、シカの報奨金が高く設定されています。

注意
  • 県や国の補助金は、自治体ごとに割り当てられた上限に達すれば打ち切りになります。実施期間も補助金の種類によってさまざま。
  • また、報告書を提出すればすぐに報奨金が振り込まれるわけではなく、年度末で締める補助金もあるのでキャッシュフローがすぐに回転するわけではありません
    この5月に捕獲しても県の補助金が振り込まれるのは年度末になる場合もあります。

ハダの場合、補助金によってはまだ振り込まれていない報奨金もありますが、2018年11月15日〜2019年3月15日までの猟期、3月16日〜3月末までの有害鳥獣捕獲期に捕獲したシカとイノシシの報奨金ですでに30万円以上が振り込まれています。

5月末までの未振込分を合わせると40万円以上の見込みが立っています。

スキルを磨きつつ、罠の設置数を増やし、角の販売なども組み合わせたら年間100万円を得ることも十分にできそうです。

  • 2018年11月〜2019年5月7ヶ月間
  • シカ&イノシシ24頭を捕獲
  • 報奨金や個体販売金額の見込みは40万円程度
  • 1ヶ月あたり平均5.7万円の収入見込み
  • 大量&新鮮なジビエを入手

毎日、雨の日も雪の日も罠を設置し見回りをし続けた甲斐がありました。

狩猟を始めたことで早寝早起きの習慣が完全に身についたのも狩猟を始めてよかった点です。

「今日は獲物が掛かってるかも!」と朝起きるのが楽しみになりました。

自分で解体して肉を手に入れるか、獣肉解体施設に販売するか

「罠に掛かった獣はどうするの?」と気になる人も多いと思いますが、基本的には上の3パターンがあります。

くくり罠で捕獲した獣の解体3パターン
  1. 解体施設へ個体販売する
    西粟倉村内のエーゼロ株式会社が運営する獣肉解体施設へ個体販売
    エーゼロは道の駅や東京の飲食店などに肉を販売する
    食肉に使わない内臓や骨はドッグフードなどの材料になる
  2. 自分で解体して肉を手に入れる
    獣の解体は手間と時間が掛かるが、10kg以上の肉が手に入る
  3. 個体販売も解体もしない
    罠に掛かった獣がすでに死んでいたり、肉が傷んでいる場合は1・2ができない

特に、日本全国で捕獲されているシカの9割以上が「3:個体販売も解体もしない」方法で山に埋められているのが現状です。

せっかく獣を捕まえて命をいただくなら、美味しく食べたいし、美味しく食べてもらいたいものです。

とはいうものの、一人で家の庭で獣を解体して他人に販売することはできません。

西粟倉村では、エーゼロ株式会社が獣肉解体施設を運営し始めたことで東京の飲食店などジビエを流通させることができるようになりました。

MEMO

ジビエを販売する場合、衛生面から保健所許可のある解体施設での解体が必須です

また、村内には移住者・渋谷さんが新たに始めた革工房・渋谷カバンがあり、シカ革による革製品の開発や販売も進んでいます。

近々、自分が獲ったシカの革でキーケースや財布を作ってもらう予定。楽しみだな。

参考 渋谷 肇 Hajime Shibuya渋谷カバン

また、雄シカがくくり罠に掛かった場合はが手に入ることもポイント。

メルカリなら角1本2,000〜3,000円で売れますし、頭蓋骨付きなら1万円近くの値段で取引されることもあります。

アクセサリーのDIYドッグボーン(犬のおもちゃ)インテリアとして使われています。

シカの角や丸太の輪切りがメルカリで取引されているので田舎的小商いについて考えてみた

くくり罠の手順 罠設置〜見回り〜捕獲〜解体

くくり罠で獣を捕獲する手順は以下です。

これをひたすら繰り返します。

くくり罠の手順
  1. 山に入り、くくり罠の設置をする(現在は8本程度)
  2. 毎日くくり罠の見回りをする(確認・修正)
  3. 獣が掛かっていた場合は、捕獲〜止め刺し〜解体

サラリーマンがスキマ時間で狩猟に取り組んでいるので、狩猟に費やせる時間はわずか

現在は1週間あたり8時間程度の時間を掛けています。

そのため、効率良く獣(特にシカとイノシシ)を捕獲することが必要です。

くくり罠で効率的に獣を捕獲するために下記のポイントを意識しています。

捕獲数=罠設置数✕獣通過率✕罠作動率✕早期発見度
  • 罠設置数
    複数の罠場を用意し、毎日見回りできる程度の罠を掛ける
  • 獣通過率
    獣が頻繁に通り、罠を避けられにくい細く濃い獣道を狙う
  • 罠作動率
    罠を避けられないよう丁寧に隠し、脚が掛からない空弾きを減らす
  • 早期発見度
    獣が死んだり罠が傷まないように早期発見する

罠を掛けてその日の晩に獣が獲れることもありますが、1ヶ月経っても獲れない場合もたくさんあります。

スキマ時間の副業狩猟の3つのポイント

報奨金を目当てに獣を獲ったら山に捨てるなんてしたくありません。

せっかく自分が苦労して捕まえた野生の命ですから、きちんと命を使い切らせてもらいたいと強く思っています。

スキマ時間の副業狩猟の3つのポイント
  1. くくり罠の設置、見回り時間の確保
    平日1時間、土日いずれか3時間 計8時間は狩猟に費やす
  2. 稼働時間あたりの捕獲数を高める
    土日に罠を入れ替え、平日に見回り(確認・修正)を繰り返す
  3. 獣の利用率の向上
    報奨金だけではなく肉も角も皮も使い切る

1箇所の罠場に罠を3つ掛けても、1匹しか獲れないことが多いので、複数の罠場を用意し、1日に2頭、3頭と獲れる日を増やせるようにすることが直近の課題ですが、なかなかうまくはいきません。

現在は家から徒歩5分圏内のエリアに集中的に罠を掛けて見回りがしやすいようにしていますが、冬の猟期に比べて獣を捕獲する頻度はずいぶんと落ちています。

山から獣が下りてこないのか、単にスキルが無いだけなのか。見えない相手との戦いは面白くも難しいものです。

獣の命を美味しくいただくジビエレシピ

平日の朝に掛かった場合は仕事もあるので解体に時間を費やすことができず、獣肉解体施設に個体販売する場合が多くあります。

週末に獣が捕獲した際は美味しく肉をいただこうとさまざまなジビエレシピを試しています。

【狩猟】家の裏山でタケノコを掘るイノシシをくくり罠で捕獲、解体して食べてみた くくり罠で捕獲したイノシシの骨で出汁スープを取って猪骨チャーシューラーメンを作ってみた 家の裏山でくくり罠を使って雄シカを捕獲したので解体して睾丸と陰茎を食べてみた

イノシシを捕獲した際はイノシシの骨(猪骨)を煮込んで猪骨スープを作り、猪骨チャーシュー麺づくりにもチャレンジしてみました。

美味しかったのでまたやりたい。

そして、シカの陰茎や睾丸は鹿鞭(ろくべん)と呼ばれ、中国で高級漢方薬として愛されています。

食べるととんでもなくギンギンになるぞ!

免許取得〜罠購入まで4万円の初期投資で始められるくくり罠猟

狩猟を始めるには各県で狩猟免許を取得し、猟友会に所属する必要があります。

西粟倉村のある岡山県では、下記ページに狩猟免許の取得方法が掲載されています。

免許自体を取ることは比較的簡単です。

講習を受ければおおよその人が試験に合格しています。

参考 平成31年度(2019)狩猟免許試験を実施します岡山県
狩猟を始めるために掛かる費用
  • 狩猟免許の取得費用:5,200円
    既に他の狩猟免許がある場合は3,900円(の収入印紙)
  • 狩猟税など登録費用:20,000円程度
    狩猟税、登録手数料、ハンター保険、大日本猟友会費、診断書など

くくり罠を始めるために最低限必要な道具は以下です。

くくり猟を始めるために必要な道具
  • くくり罠 セット1本 6,000〜9,000円程度
    少なくとも3本程度あるとよい
    自作すれば3,000円/本に抑えられる
  • 罠設置の道具(穴掘り用) 1,000円程度
    片手で持ち運びできる小さな鍬(クワ)で良い
  • 止め刺しの道具 計5,000円程度
    ・ナイフ
    ・バール
    まずはバール(釘抜き)などの鈍器で気絶させる方法が良い
    不安なら電気止め刺しがおすすめ

いわゆる弁当箱タイプのくくり罠は深く下穴を掘る手間が省けるので便利です。

ハダは先輩猟師から譲り受けた笠松式の押しバネ式を愛用しています。

村の先輩猟師から譲り受けた笠松式くくり罠

くくり罠を設置する際の下穴掘りはこういった片手鍬が携行しやすくて便利です。

スコップでも良いのですが、竹の根や石が多い地面だと簡単に曲がって壊れてしまいます。

解体用ナイフはビクトリノックスを愛用しています。

コスパが高くてよく切れます。プラ製の柄なので洗いやすいのもポイント。

罠場で獣がどんな動きをしているのか知るためにはトレイルカメラがあると最高です。

獣のいない場所に罠を掛けても獣が獲れることはありません。

トレイルカメラの情報をもとに、罠場や獣道の選定をすると良いと思います。

最後に

獣の命を奪って報奨金を得られる狩猟は情報がブラックボックスに入りがち。

狩猟に関しては様々な意見があるのでこの記事を書くのは勇気が要りました。

でも、狩猟という行為はとても学び深くて有り難いものだと思っています。

スーパーマーケットで肉を買うだけでは分からない、獣の息づかいや温度、季節の美味しさに触れることができます。

人口1,500人弱の西粟倉村の猟友会メンバーは現在20人弱。

西粟倉村では、年間600頭以上のシカを捕獲しないと数が減少しないと推定されている中で現在は年間200頭程度しか捕獲できていないのが現状です。

これではシカが増える一方です。

自分自身も庭に植えたネギが一晩にしてシカに食べられてしまいましたし、近所のおっちゃんおばちゃんも獣害に頭を悩ませています。

「まるでシカに囲まれて生活しているようじゃ」と、お金を掛けて畑を厳重に柵で囲う農家さんもたくさん。

獣害を少しでも減らすためにもシカやイノシシを捕獲し、捕獲するだけではなく命を美味しくいただいて、しっかり収入も増やす。

そんな若手猟師が増えたら嬉しいなと思っています。